もう好きじゃない(第九十七夜)

「便利だね」
笑い合うも、はじめてのスカイプ通話は照れくさかった。
便利さに慣れ、彼と遠距離恋愛のさみしさも慣れ、約束した通話をすっぽかされてもなにも感じなくなっていった。
終わりだ、と無感動になった矢先、彼からのスカイプ着信があった。
カメラに映る彼の部屋、前回と変わらぬようで大きな差違がある。
部屋のすみに、女の後ろ姿。
『ごめんな、最近体調悪くて』
私はただほほえんだ。
『仕事も忙しくて』
女がこちらを向く。
『会いたいなぁ』
彼の言葉に、女はにやつきながら首を振った。
「気になる子でもできた?」
『そんなわけないだろ』
憮然顔の彼の背後、女が首に腕をまわす。力がこめられる。彼が顔をしかめ、咳をした。女の口が動く。なにをいっているのか聞こえない。
「私はいいから、ゆっくりした方がいいんじゃない?」
『そうか? 悪いな』
女の指が、彼の首に食いこんだ。
苦しげに顔を歪める彼と、女の笑顔。
「じゃあね」
私は女に向かっていう。
『うん、じゃあ』
怪訝そうな彼の顔。
遮断した通話の向こう、私とおなじ顔の女が彼といる。
もう私が持っていない恋慕と未練を携えて、私から乖離した私が、彼の首を絞めている。