猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る(3)


 二編収録。
 通学途中に、電車内で猫を見たアヤメさまは、その猫を追いかけるが……?(猫と弁天)
 ある年末。姉上のリンドウ姉様より、「今年の宝船にはお前が乗りなさい」と言われ、アヤメさまは初めて宝船に乗ることに(アヤメさま、宝船に乗る)

 アヤメさまがとにかく可愛いです。普通の人の感覚からすれば、弁天様というのは神様ですので、完璧な超人かな、とも思うのですが、アヤメさまは違います。平成になって生まれた弁天様・アヤメさまは、若いがゆえの不完全さがあり、不完全がゆえに、とても愛らしく、人間臭いのです。
 他の弁天様もとても魅力があり、著者の大和かたるさんが、理想の女性像を求めて書いている、と仰っていたのも頷けます。
 物語は日常から少し外れた不思議、といった感じです。弁天様の神通力を、ごくごく自然な感じで描かれていますので、するっと飲み込めるのが魅力です。人間の持っている毒も、いやらしすぎないくらいに描かれていて、弁天様が主人公でありながら、人間であることの悲哀を、悲観的になり過ぎない程度に感じることが出来ます。
 文体も柔らかく丁寧です。大人も勿論ですが、中高生などの若い層に是非オススメしたい同人誌です


発行:宝来文庫
判型: A5 78P
頒布価格: 500円
サイト:だぶはちの宝来文庫
レビュワー:岡見眞琴

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