2021年2月27日 / 最終更新日時 : 2021年2月27日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 電書鳩は国境を越える 旧世界でも、この地域は広い砂漠だった。もともとの気候にくわえて、長く続いた内戦のせいで緑化施設がことごとく破壊されたので、ヒトはこの地域の都市を棄てたのだ。 だから、世界を二分した百年戦争が起きるよりも前に、一帯の大き […]
2021年2月27日 / 最終更新日時 : 2021年2月27日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 いつも序章を待っている 図書館の、本棚の裏側。音をたてないようにいつもの場所を確かめる。手紙はやっぱり来ていなかった。連休だから仕方ない。 静かに通路を進み、そっと鍵を開ける。その先にあるのは歴史研究会の――文化部として割り振られた部室とは別 […]
2021年2月26日 / 最終更新日時 : 2021年2月26日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 秘密が機密になる秘密 今から国家秘密を送る。あたしは受話器を耳から離して、暗い廊下の向こうにある玄関ドアをじっと見た。床のひんやりとした感じがふくらはぎのすべてを濡らしたとき、ふたたび耳をくっつけて「なにも来ないケド」としびれを切らした。や […]
2021年2月26日 / 最終更新日時 : 2021年2月26日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 私を罰してくださるその日まで お嬢様が姿を消されたのは、ちょうど三年前のことでした。 私はお嬢様のメイドとして、二年ほど身の回りのお世話をしておりました。お屋敷に住み込みで働く私は早朝から仕事を始めます。テラスの植物に水をやり、既定の衣装を身に着け […]
2021年2月26日 / 最終更新日時 : 2021年2月25日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 おかしな誓い 地球は青かったと言ったひとがいたけれどその申告は一度きりであって、いまもこの星が青く光っているのかは定かではない。ただ、地上からしてみると夜はいつの時代も錆を含んだ藍色をして、暗くて、足元を照らすものがないと恐ろしくて […]
2021年2月25日 / 最終更新日時 : 2021年2月24日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 「過去の私へ」「未来の私へ」 成人式の日、私は着慣れない振袖衣装で、冷たいパイプ椅子に座っていた。 長い市長の話がやっと終わり、それこそ儀式的にかわるがわるスピーチ台に人が乗り、話をして、また降りる。それの繰り返しを、重い瞼を何とか開いて聞いていた […]
2021年2月25日 / 最終更新日時 : 2021年2月24日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 金魚掬い すっかり筆不精ですみません。頂いたお手紙は全て拝見しております。励まされてもおりました。漸くのお返事になることをお許し下さい。先日拝見しましたあの金魚の絵、此度の展示でも見られること嬉しく思います。こんなことを言うのな […]
2021年2月24日 / 最終更新日時 : 2021年2月22日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 存在しない手紙 アドレスや何かしらのメッセージアプリのIDを聞き出そうとしたところで教えて貰えるはずが無い。 阿久津玄あくつげんはこの秋から通い始めた学習塾の座席からパーテンション越しに見える講師の男、米城隼也よねしろしゅうやを見 […]