Text-Revolutionsアンソロジー「和」(2)

arasuji

第四回Text-Revolutions公式アンソロジー。
103の『和』を是非お楽しみ下さい!

※過去の感想はこちら
 Text-Revolutionsアンソロジー「和」


kansou

「その名はアリス!-末期大正怪奇夜想譚-」世津路 章さん

大正浪漫で百鬼夜行で軍装の麗人とショタ、世津路さんの持ち味がぎゅっと詰まった一作。スピーディなバトルシーンが格好いい。日常パートは鞠子ちゃん無双なんやろうな~と想像してニヤニヤしました。

「この素晴らしき難問」藤和さん

良い難問!着付けも帯の結び方も知らない人(私含む)から見たら、実際あんなに単純な形だとは思えないですもんねえ……。貫頭衣から随分遠くに来たもんだ。文化ですね。

「和をもって和み、和と成す」たつみ暁さん

色々な「和」が描かれた作品。真理亜の考え方が大人びていて、また切ない。もう少し大きくなれば、そんな小さな「和」を俯瞰できるようになるのでしょうけど、和装から真理亜の世界が広がるといいなあ。

「ハニワを作りに「のぼうの城」の行田市へ!」柳田のり子さん

全編たくさんの愛に溢れててニコニコしながら読んでしまいました。Dちゃんさんは発想が面白いし、それを受け止めて投げ返す柳田さんの感性もユーモアたっぷりで。観光スポットそっちのけの埴輪一筋な旅路、面白かったです!

「わびしい夜には」弥生ひつじさん

こちらもたくさんの「和」。ママさんお上手やなあ。飲みに行くのが楽しみになりそう。たぶん奥さんと仲直りして、次は二人で訪ねるんだろうなあ。

「The Egg and you.」高梨 來さん

可愛かった……!お年頃の男子が湯たんぽ挟んできゃっきゃしてるとか、どこの楽園かと……。あたたかい関係性が描かれます。そしていのりんクラスタとしては、いのりんGJ!と思うわけです。(注:いのりん=祈吏ちゃんはカイこと海吏くんのふたごのお姉さんです)

「国王と黄金色の寧日」卯月慧さん

王様が暇なのは優秀な臣下と平和な世の中ゆえ。よきことです。垣間見えるブラコンなところもほのぼの~。

「白露」凪野基

_(:3 」∠)_

「15歳の夏」まるた曜子さん

シビアな現実を切り拓いて踏み越えていく少女たちの強さと逞しさ。隠されてしまいがちな儚さと痛ましさを支えあうふたりの「戦友」感がすごく素敵。悪いことはさておき、でも私は私で生きていくんだっていう自立が清々しい。

「体験レポ集より「小学生向け料理教室」」氷砂糖さん

みかん……(笑)和やかな雰囲気だけど、アウェインの背景とか、語り手さんは人間じゃなくない?とか、給食が懐かしいってことは今は何食べてるんやろ、とか余計なことを考えてしまってちょっとぞわっとしました。深読みしすぎ?

「「月は欠けゆく」 抄」野間みつねさん

原作を知らないうえ、歴史にも疎いのですが、己への厳しさと、同時に近藤勇に対するプライドも感じられました。新撰組というと、幕末の混乱と血腥さを想起するのですが、どこまでも静謐な作品で、印象が改まりました。

「同人ストレイドッグス」浮草堂美奈さん

元ネタは知らないのですが、笑いました~。これはずるい!誰もが最強、ガチ殴り。女性陣が(ナコさん含め)みんな魔性ぽくてニヤニヤしちゃいました。性癖で殴るってこういうことか~。登場してる方は(一方通行含め)殆ど存じ上げてるので、それだけに含み笑いが。

「独裁者」森村直也さん

素晴らしい力作。独裁者が舞台を去り、国の在り方がどのように変わろうと彼女には永久に平和は訪れないのではないか。現実を鑑みてそんなふうに思いつつも、彼女の存在こそが「和」であることが希望のように感じられました。

「和やかなる時~衣川~」ひなたまりさん

この時代の二十歳といえばもう立派な大人、それだけに責任も重いのでしょうか。気軽に会えるわけでもなく、ふて腐れる貞任と取りなす経清の交流にしんみりしました。それから、ご馳走がすごく美味しそうです……!
敢えて史実は調べずに感想を書いたのですが、どうやらこの後大変なことになるらしく、調べるべきか目を背けておくか……悩みます。

「彼の行方、その謳の向こう側 ~食堂にて~」鶴亀七八さん

私ならこうするな、という方法を二人とも使わなかったので禁じ手なのかなーと思っていたら、まさかのシリアスに考えすぎていた系……!(笑)

「暗夜想路」ピクルスさん

身体が弱く、思い通りにならないことが多かった分、思いが強すぎて引きずられてしまったんでしょうね……。つらい。

「社会は今日も不条理だから進んでも退いても後の祭り」こくまろさん

初っぱなの一言から真っ黒案件確定でしたが、さらに積もり積もる黒いあんちくしょう……。カラッと笑って済ませられない、実際の現場もそう大差ないんじゃないか、と思わせるリアリティに恐怖。

「和(やわらぎ)」つんたさん

理想と現実の隔たりを埋めるべくあちこちの国で血が流れて、それは今でも少しも変わっていなくて。絶対的な正解もなく、その模索が歴史と呼ばれているわけですが、毎度すみません歴史不得意で……。

「太白寮小景 セイガイ波!」古月玲さん

明るいノリに笑ってしまったけど、かめはめ波と違ってセイガイ波は通じる人と通じない人がいそうですねえ。白と青の二色でびよんびよんびよん、て発射される絵面(イメージ)が大変雅やかなような……。

「彼女が白和えを作ってくれた話」宗谷 圭さん

和久井さんの気配りと根性(執念?)が可愛いです。白和えって地味に味決めるの難しいんですよねえ。「先生」の正体がバレたら……と冷や冷やしながら読みましたが、ほのぼので終わって良かったです。

「水無月の川辺で -朱鳥の神楽・小外伝-」悠川白水さん

ちょっとした遠足を楽しむ少年少女のいきいきとした描写が良かったです。川で拾った石にまつわる価値観の相違にくすっと笑ったり。そしておっちゃんが格好いいです……!物語の重要人物なのでしょうか。世界観も素敵。

「士郎の何でもない幸せな一日」ヒビキケイさん

行きつけにしたい喫茶店です……!大袈裟な言葉はなくとも、気遣い(もちろん、提供されるコーヒーやケーキも含めて)によって満たされそう。ガトーショコラが食べたくなりました。

「花の中の花ー種と花ー」ほたさん

町を良くしようとするヴィクトルの熱意と、何だかんだ言いつつ巻き込まれていくローレンのお人好しなところが微笑ましかったです。二人とも、腕っぷしに頼らず相手をやり込めようとするところが何だかほのぼのしました。

「BAR NAGOMI」紗那教授さん

バーテンという、言ってしまえば赤の他人だから話せることもあって、しかも二人はどことなく似た境遇にある。ガールズトークだからこそこぼせる本音と毒を吐ききった爽快感がカクテルの味わいと相まって、すっきりした読後感。

「手品師と煙」南風野さきはさん

手品師の性別が明記されていないことや、翠のひとときにお菓子が溢れる様子がファンタジック。描写が流麗で美しく、各シーンを絵葉書にしたいなあなんて。男の職業は何でしょう。パティシエかと思ったけど違うな……。歯医者?

「片腕」孤伏澤つたゐさん

とうらぶ、よく知らないのですが、刀剣という無機のもの(を擬人化したもの)だからこその艶かしさと官能でもあるなあと感じました。片腕ゆえのえろすがたまりません……!弟くんのお兄ちゃんへの感情が、熱くて鋭くてため息。
源氏の刀というくらいの知識しかないのですが、擬人化されたキャラクタが手指を絡める、ということは刀剣が切り結ぶということ、なのでしょうか。愛情の奥底に流れるものがある……?

「お菓子を巡る物語」風城国子智さん
おしとやかっぽい主人公が、先人の意見に意趣返しを試みるところが可愛かったです。フープロも圧力鍋もレンジも冷蔵庫も、便利なものは何でも使ったらいいのよー、派。大事なのは作ろうっていう心がけじゃないでしょうか。

「塔と孤独たちの昼餐」跳世ひつじさん

陰鬱で不均衡な内包関係にぞくぞくします。アップルパイと青りんごという一致(と込められた比喩……?)に儚い期待を抱きつつも、すれ違ってしまう。食べることは性行為の近似、けれどそれもぎこちないまま終わってしまって、いっそ訣別してしまえばよいのにそうできない。オルガもマリアも「ものを食べて生きる」イメージがないのは、ふたりの決定的な齟齬を表しているのかも。モノクロームの世界に浮かび上がる赤い雨が印象的でした。

「春臨」水成豊さん

寒い冬に人々が想いを交わす心暖まる一幕。ナタリフさんがどうしてお店を「単なる霊薬店」にとどめたくなかったのか、という所にもドラマがありそう。ユーノスとキリムの毎日のどたばたを解説する口調にも人柄が滲み出てるよう。「春臨」というタイトルがじんと沁みます。

「河童のハニートラップ」宇野寧湖さん

槇先生が民間伝承にも強いのが意外でした。もしかして、雨や車のトラブルまで含めてトラップだったり……?と邪推。凛とした羽鳥さんがかっこ良かったです。本編の続きも楽しみです!

「落ち葉の季節」seedsさん

文さん可愛いー!色々な意味で変わり種の文さんを温かく受け入れているのが素敵な関係性だと思いました。むしろ望まれているんだから、落ち葉チャレンジに成功してももしかして……?なんて思っちゃいます。

「紙風船と万華鏡」こうげつ しずりさん

無力な子どもたちの、それでも精一杯友だちを喜ばせたい、何とかしたい、と思う気持ちが切ない。お互いの存在が万華鏡の中のように、暗闇に浮かぶひとつふたつの灯りとなりますように。

「和珠が繋ぐ絆」桐谷瑞香さん

セイガイ波ー!じゃなくて。和模様、良いですよね。異文化を前に押したり引いたりしつつも息の合った三人でした。この文字数でバトルと日常シーンを織り込むのすごい……。そして槍+少女は正義です。

「ココロ安らぐ場所」天野はるかさん

息子はどんどん大人になって親の庇護下を離れるけど、父にとって息子はいつまでも息子なわけで。親との付き合いづらさは誰しも通る道、その期間を過ぎてひとつ大人に近づいた主人公が頼もしいです。

「アイスクリーム屋さんTE・ROLLのご主人のすること」遠藤 ヒツジさん

屋号からニュースの内容から紙面に書けないあれやこれやの酷いことはもちろん、「あ、プ○キュア!」の声の明るく弾む感じとのギャップがさらに怖かったです。テ○ム・バートンが全力でシュールを描いたイメージでした……。

「薔薇の和名」香澄或乃さん

少女時代のほんのり甘い憧憬とすれ違い。ラストから、もしかして彼女は遠くない未来にはかなくなってしまったのかしらと想像してしまいました……。だとすると切ない。
ちなみに薔薇についてはhttp://roseraie.jp/archives/knowledge/japanesenameを見ました。

「山吹の花」乙葉 蒼さん

種を越えた思いやりがじんと染み入るお話でした。春のうららかな陽射しと、一面の山吹の花の色彩が目に浮かぶよう。

「甘いものが好き」青波零也さん

プッチンプリンにあざらし、甘味。ギャップ猛者の南雲さんがかわゆかったです!八束さんとの凸凹感もたまりません。本編は未読で、番外編ばかりを読んでいるせいか、食べ物の話ばかりしてるイメージが強いです……。

「約束のプレイボール」青銭兵六さん

めっちゃいい話でした……!前回、短い版を読んでいただけに余計にそう思うのかもしれません。静かな筆致ゆえの情感が染み渡ります。「Good!」ジョーンズさんの笑みが目に浮かぶようでした。

「繭姫」あずみさん

姫の無垢な慕情、見守る渡し守。近づきすぎないゆえの交感が好ましく、また切なかったです。姫の左前の装束や、しあわせな思い出は愛されていた証。死してなお川のほとりで愛おしんでいた思い出がほどけてゆくさまが何とも、それが世の常、ならわしであり健全なことなのだとしても、刺すように痛みました。姫がこんなに思い焦がれているのに、人の世はめぐり移ろってゆく。その無常を見つめる渡し守の眼差しが素晴らしかったです。好き……!

「水族館的サマーフェスタ」紙箱みどさん

表情豊かな人魚、ベルすけちゃんが可愛い!ベルすけ、って呼ばれ方もかわゆいです。浴衣似合うんでしょうねえ……。タカミネさんは別の場所でみかん食べていた方でしょうか。作品のリンクも気になります。

「神の山の巫女」三谷銀屋さん

自分達で選んだ巫女、生贄に近い存在である彼女への罪滅ぼしのつもりなのか、凛子を神格化しようとする村人、開発を進める余所者。大人たちの身勝手に振り回される凛子が哀れでした。坑道は山の神が開いたのでしょうか……。

「鳥類戦隊バードマン~平和な日曜は決め台詞の日」小高まあなさん

メタい……(笑)メタネタは殆どわからないのですけど、昨今のニチアサ事情が垣間見えるコメディでした。

「ニンジンサラダを和えれば」服部匠さん

おいしいごはんは生活を豊かにします……!掃除機かけは雑なのに、台所仕事はまめな智くん、良いですねえ。発行時バターのフィナンシェなんて絶対おいしい!裕也さん、我慢しきれずこっそり味見してそう。

「団子と恋」佐和島ゆらさん

すごく共感して読みました。こっちは色々考えているのに、相手からすれば全然取るに足らないことだったり、通じなかったり。ほんのり渋く、そして甘い。まさに和菓子とお茶の関係だと感じました……。

「和服を着たベルギーの少女」迫田啓伸さん

こうして改めて見てみると、四季のある風土ならではの文化ですね。偏見なくそれを受け入れる少女の素直さが良かったです。ラストシーンの邂逅がじんと染みます。

「青空のつくりかた」森瀬ユウさん

交わした言葉やその時の鈴木の態度を柔軟に受け止める霧澤、いい人ですねえ。世界観の広がりも感じさせながら、図書室の静けさと、一時の交流から芽生えた新たな人間関係が描かれていて、学生の頃を懐かしく思い出しました。

「泣草図譜やまばと編(アンソロ版)」うさうららさん

秋、これから枯れゆく季節に向かい野山を彩る草花の短歌と画。ふと感じる一抹の寂しさ。すごくすてき……すてき……よい。(語彙)秋桜の歌と、「爽藾かまわずに行け」が好きです。カラー版もぜひ見てみたいです!

「遠く離れて大和をおもう」庭鳥さん

ちょっとぐぐってびっくりしました。十八歳で!何を思ってこの歌を詠んだのかと思うと切ないです。教科書に載る事柄、その活躍の陰にもたくさんの人々がいるんですよね。そこにスポットを当てる歴史クラスタさん、すごい……。

「月食み」真北理奈さん

女の子を喰うから「月食み」なんですね。タイトルが綺麗。鬼の、食べたい、食べる、けれどこれでよかったのか、という逡巡が余韻を醸します。

「わ」木村凌和さん

連れの少女が迷子になったおっさん二人の邂逅。はぐれたことで少女のことを心配し、やきもきしている保護者組と比べ、平然としている少女たちが可愛いです。この後にはメイズと流風の静かなバトルが繰り広げられるのでしょうか。

「秋の日に」せらひかりさん

食欲の秋!ほのぼのした日和も、生垣のお家の住人さんたちも、人の世のあわいにある存在だからか、どこか鷹揚で達観しているような。もうすぐ栗の季節ですねえ。

「きみのしかく」七歩さん

うっうっ、色々書きたいけどネタバレ怖い……!探偵と助手の、どことなくメタネタを思わせるやりとりからどう続くのかと思いきや、驚きの展開でした。アイデアとユーモアの豊かさにニヤニヤが止まりません。

「「指輪」抄」鳴原あきらさん

仲睦まじい夫婦、夫の同僚の女性。どうなるのかとどきどきしながら読みました。ラストはまた違う意味のどきどきが……!最後まで一気に読ませる力のある小説で、構成がすばらしいなと。さすがです……!

「和平の証の涙曇り」永坂暖日さん

骨太設定のファンタジー。番外編なのでしょうか、未来を担う若い二人のこれから、イーリスの魔力はどうなってしまうのか、もしかして両家の確執が再燃したり……?と様々に想像が膨らみます。二人に幸あれと祈らずにおれません。

「朱の記憶」雲鳴遊乃実さん

少女は石段に腰掛けて、ずっと町を見下ろしていたんですね。通りすぎてきたもの、過ぎ去ったものを少女ばかりが留めている。移ろいゆくものの儚さと無常感な独特。淡々としたモノローグと情景描写が映画のようでした。

「ポニーテールとループタイ」濱澤更紗さん

藤川くんの空回りっぷりがコミカルで、でもどこか憎めないキャラクターでした。九谷焼のループタイ、素敵でしょうねえ。金沢には二度行きましたが二回とも雨で、殆ど何もできなかったことを思い出しながら読みました。

「旅立つ前に」Rista Falterさん

過労死するほど働かないと生活がたちゆかなかったのに、仏壇があるのは矢糧さんへの情とも考えられるし、でも新しい人生を歩んでいるのも予想されて然るべき。自分が矢糧さんだったらどう感じるだろうと考えてしまいました。

「講和条約と踊らない叔父さん」オカワダアキナさん

叔父さん格好いいです。だめなおっさんラブです。どんな理由があって踊らなくなってしまったのか、新刊を楽しみにしています。「僕」の大人びた眼差しが何を見るのか、あるいは見ないのか。クリームソーダはおいしいです。

「平和を願う王子」藤ともみさん

これは……今後この国がえらいこっちゃになるやつ……!蛮族っていうのもきっと、「呼び方から相手を貶める」系。彼の行く末が不安ですが、国が大変なことになった後から本編が始まるのかな。正義を名乗る人は危険、の真理。

「平和的講和条約」田畑農耕地さん

戦勝国が賠償金を取らない選択をするなら戦争そのものを回避すべきで、でもそうしなかったってことはL国の民心をW国側に傾けるのが目的?むしろ官僚は人間じゃないとか?とうすら寒く感じました。心が汚れてる自分を自覚……。
(受け取り方は様々ですが、素晴らしいやり方と仰ってる方と策略だと読んでる方に分かれたのでちょっとほっとしております)

「石の野いちご」猫春さん

すこしふしぎ!欲張っちゃいかんという戒めが含まれているようでもあって、でもそんなことより何より野イチゴのジャムが美味しそう。クリチとクラッカーを用意してお裾分け待ってます!(脂肪フラグ)

「徒夢」佐堀さん

しっとりと、水気を含んだ色気を持つ情景描写が素晴らしかったです。さにわは後藤君にとっては酷いことをしたと思うのですが、賑やかな本丸にあって、愛する太刀を失ったさにわの孤独と任務遂行の重圧を思うとやりきれません。とうらぶは遊んでいないので、見当違いのことを書いていたら申し訳ありません……。

「捧げる祈りは」たまきこうさん

つらい……けど、好き!鷹と夜鷹の兄弟も、珍らかなものとして囲われるゆきのも、薄々事情を察しながら、知らないふりをしていれば無邪気な子どもでいられる。でも、いつまでも子どものままではいられなくて。切ない……。

「平和の鳥」病氏さん

この鳥を兵器転用して、間もなく次の戦争が勃発する未来しか見えない……。商人はさすが、商魂逞しいというか、腐っても商人というか。

「旅行の頃」梅川ももさん

由くん、完全に由夏ちゃんに振り回されてますねえ(笑)今は由くんべったりの由夏ちゃんですが、高校生活が始まると友達付き合いやら部活やらで見向きもされなくなる可能性がなきにしもあらず。よい卒業旅行を~。

「あんこの幸せ」瑞穂 檀さん

和菓子×にゃんこ×縁側×老夫婦!ほのぼの~。秋という季節に感じる一抹の寂しさもほんのりと。私は断固こしあん派ですがつぶあんもおいしくいただきます!

「お花見場所取り合戦」徳永りくさん

何だかんだ言って仲良しの三條さんと海原さんが微笑ましいです。お花見のためではなく、場所争奪戦のために争奪戦をしているようになっているところも。無事お花見ができて良かった。

「橙から群青」秋助さん

千月は(お母さんデザインの?)少女のかたちの水槽に己を投影してしまったんでしょうか。「母に~させられている」と言う関係性を断ち切って、新しい場所で生きていてほしいです。

「箱庭で死ぬの」桜沢麗奈さん

足の不自由な母、介護する娘。福祉行政の手が行き届いていない雰囲気も。濃すぎる関係性にがんじがらめになり、行きどころのない母子ともに、神様の存在が唯一、逃避できる場所だったのでしょう。寄る辺だった箱庭が失われた後、現実への橋渡しとなるべく用意されたリアルの数字。それが和子をきちんと導くであろうと見抜いた、娘を信じた愛情に打たれます。タイトルがすごく良いです……!

「梅酒のロックはぬるいのしか飲んだことがない」姫神 雛稀さん

終盤、ぬるい梅酒ロックに触れられるほんのりしっとり感が好きです。二十五歳、未来の話だけをしながら気心の知れた友人と飲んで食べてができる彼らがちょっと羨ましくなりました。

「榛名神社参詣」唯沢 遥さん

参道を歩くうちに現世から離れてゆくような感じ、よくわかります。来るべくして来たのだ、とか、呼ばれている、とかまさにそんな感じで。あの感覚は科学的に説明できないことのひとつのように思います。

「かわいいひと」豆塚エリさん

生活感のない実家の様子に比べ、生々しく描かれる夢、謎の女性、黒猫が不気味です。毒の夢は仕事に打ち込むことに後ろめたさがあるからなのでしょうか。仕事ゆえに家庭不和に至ったのか逆なのか。もう後戻りはできなさそう。

「圓谷古道具店」桂瀬衣緒さん

いやいや、ちゃんと落ちてますよ桂瀬さん!元鞘に収まってさてこのまま……と思ったところでの落ち、確かにその通りなんですけど、加代ちゃん、不覚でしたねえ(笑)

「姫たち(『創月紀 ~ツクヨミ異聞~』より)」とやさん

周りの女性を見る煌々の観察眼としっかりした性格に、彼女を応援したくなりました。血縁やしきたりが支配する中で、それに反して生きるのは難しいけれど、強くあってほしいです……。

「付喪神の見る夢」真乃晴花さん

ほのぼのしんみり。清光も安定も、志半ばで病没した沖田のことが大好きなんですね。刀たちがそれぞれに持ち主(や来歴)を反映しているのは擬人化ものの醍醐味だと思うし、とうらぶを遊んでいない読者への配慮が有難かったです。

「なごみ古書店」壬生キヨムさん

独特のリズム感と情景喚起力を持った短歌たち。鋭い一突きに惹かれます。「もののけのような姿~」がすごく好き。おじさんもこどももねこも、本にまつわる様々な情念も。

「甘んじて、逸脱」緑川かえでさん

初回のアンソロからこの主従の姿を見ていて、彼らは善悪とか正誤とか道徳とかの及ばない地平にいて、このあり方こそが彼らにとっての最適解、調和なのかな……とぼんやり思いました。

「とある喫茶店の新メニュー開発秘話」末広圭さん

ピンチのまま終わってしまったのですけど、これから皆で頭つき合わせて新メニュー開発をするのでしょうか。ネルドリップということは、お味重視のこだわりの喫茶店ぽいし、奇をてらわなくとも良いような気もしますが……。

「名月-meigetsu-」きとさん

しんみり、しかししっかりラブくて可愛かったです。個人的には番犬ぽい荻野が好きなんですけど(お団子を彼が作っていたらさらに良いです)、タイプの違う名月と辰臣の凸凹コンビも気になります。

「蜜月睦言」白河紫苑さん

モラトリアムの逃避行。二人で幸せになってもらいたいというよりは、それぞれが己の役目を全うすることで充実してほしい……と感じました。

「恋し風が吹いた日に」領家るるさん

風に背を押されてあなたがやって来る。そう信じて待ったから、恋し風が本当に後押しをしてくれたのでしょうか。読み始めは(もしかして死ぬ前の幸せな幻覚……)なんて思ってしまったのですが、ロマンチックなお話でした。

「水無月更紗の愚か」オトヨミさん

ことばという枠に嵌めて意味を与えることは本来、とても傲慢なことだと思うのだけど、私たちは嬉々としてそれをする。「表現」を肯定する人たちが集う。記したそれらを受け止めてくれる人がいるから、たぶんずっと続けていく。

「君に、うまく言えない」○まるさん

みんなすごくかわゆい……!タイプの違うアーエイルとイグラスの攻防も、予想外にストレートな言葉を貰えてしまったミラも、空気の読める賢い猫も(笑)

「言の葉の道」高麗楼さん

しみじみ良かったです……。第二次大戦の頃というと情勢も不安定で、たくさん傷ついただろうに戸妍が和歌の道を歩んだのは師たちの教えが素晴らしいものだったんでしょうね。この作品を読めて良かったです。
毎度のエクスキューズで、歴史は本当に致命的にできないし、不勉強の自覚もあるけれど、こうして知らなかったことを教えていただけるのは嬉しいし(創作文芸ならではの喜び!)、好きなものについて語ってる(とは少し違うけど)のを聞くのが好きなので、不勉強なりに楽しめるからいいかなって思ったりもします。

「世間との融合、世界の均衡」ウサギノヴィッチさん

すごく速く走って、走って、一周まわってしまったような疾走感と(周囲が追いついてこない)もどかしさを感じました。ぶっちぎっている、という以上の、孤高の世界。

「和睦(ひめごと)」実駒さん

「私」はきっと人じゃないなあ……とぼんやり。椿の花が落ちるさまは、首が落ちる=人の死を思わせます。うつろいゆくものの無常感と、儚さゆえの美しさ。「私」は刹那に繰り返される営みを見つめるばかり。そんな切なさと隔たりを感じました。

「オールド・ファッションド」平坂慈雨さん

誠たちは虐げられている種なのでしょうか。ドーナツ店での不気味なまでの気前のよさ、尾行シーンのスリルと予感、それを鮮やかに翻すラスト。構成がすごく良かったです。もっと読みたい……!

「相思鼠」晴川穂浪さん

「色」とまとわりつく湿気の使い方が印象的で良かったです。「樹脂のにおい」というのはドールパーツ、すなわち自分の身体のことなのか、それともドールに見る「あのひと」のことなのか……。人とドールの境目が淡く滲む登場人物たちが幻想的で、不在の誰かを思わせる「鼠」が不気味でした。主人公は誰か、あるいは自分の身体の代わりにドールに愛を感じているかのような欠落を感じました。

「はかりごと」土佐岡マキさん

これは……すごく良いです……!腹に一物二物秘めた男女の、駆引き込みの結婚。そこから情が育ってゆくのもたまりません。お店とともに千歳のことも想ってくれるなんて明さんちょう男前……!お幸せに!そして商売繁盛祈願!

「狂わぬ時計」わたりさえこさん

好き好き好き。カナンとピエールもまた、合わない時計だったのでしょうか。引き伸ばされた一瞬を切り取るような一幕。可愛くてコミカルでシュール。

「堀川国広も燭台切光忠もひとこと多い。」ろく号室の住人。さん

みったださんも堀川君もかわゆい……!私の観測範囲ではみったださんは大きい刀との組み合わせが多いのですけど、小さい刀との組み合わせだとスパダリぽくなるんですね~。

「羽衣の棺」伊織さん

仲良し本丸とハシビロコウ。本丸設定って本当に色々なんですねえ。拗ねる金魚鉢が可愛いです。「羽衣」を演じる本丸の雅やかで華やかな様子と、そこをゆらりと泳ぐ金魚の図がすごく好きです。

「夕焼けの村」瀬古冬樹さん

「私」の忘れたいものは何なのだろう、と少し悲しくなりました。忘却のための時間を過ごしているのだと知っているのに、何を忘れたいのか、もう忘れてしまったのかわからないまま孤独に生きるのは切ないです……。

「北陸アンソロジーQ&A」ななさん

小松に二回行ったんです。一度は仕事終わりに直でバード乗って行ってどえらい雨に降られて死ぬかと思いました。傘?折り畳みが破損しました。っていう話を寄稿しようかと思って止めたのでした。北陸は雨のイメージ。観光したい!

「金魚鉢」石井鶫子さん

これ完全に誉め言葉なんですけど、私二次で活動してた時もこんなになったことないんで、ひたすら凄いと思いました……。芸術だと思う。

「でこぼこの調和」呉葉さん

三者三様にお互いを目立つと推してるところが面白く(約一名根本的な勘違いをしている編入生がいますが)まさにタイトル通りの、バランスのとれた面々でした。本編、子どもたちもきっとユニークなんだろうなと思います。

「温故」かみむらおうかさん

糠漬けおいしいですよねえ……。タッパだと簡単ですし、夏場のきゅうりは最高。「現役で働いている」ということはそれなりのお歳の……?と思ったけど違った、すみません。ごちそうさまでした。

「餃子パーティ」斉藤ハゼさん

今回も面白かったです……!一部火花を散らす人間関係、ワンタンのような餃子、とばっちり。笑えて、そしてしんみり。気の置けない人たちと楽しむパリパリ餃子とビールのおいしさ。たまりません。新刊お待ちしてます!

「和解」乃木口正さん

今回はハラハラというよりはニヤニヤしながら読みました。真面目な良人があっさり(?)浮気してしまうとは、魔が差すって恐ろしい。気をつけないとですねえ。ははは。

「逢瀬の凪桜」藤木一帆さん

設定を織り込みつつ規程内で纏まってて読み応えのある作品でした。泣いちゃう鬼が可愛い……!幸せになってほしいです。そして世話焼きお爺ちゃんグッジョブ!(笑)

「星間」轂 冴凪さん

その時代にも大人気のニンジャ!(笑)幻想はいつまでも幻想として、実現可能性のある夢はリーチの先の理想として。二つの扱い方が絶妙でした。ラーメン屋というと、これまでの……?過去作を読み返したくなりました。

「咲く花にひとの輪は回る」曽野 十瓜さん

大トリを飾る、たくさんの光る花と賑やかな祭り、人々が歌い踊る輪。賑やかで平和なお祭りの裏側に、師匠の癒えない傷(喉!)や、何やら不穏な傍点の振り方。真の平和が訪れる日は……って、前日譚ですか。ということは……!

以上です。今回は前回までに比べて詩歌ジャンルの作品が多く、嬉しかったです。
読み手目線だけでなく、テーマの扱い方、規定文字数で物語をどう切り取るか、見せるかという書き手目線でも楽しめました。
参加者さん、感想マラソンランナーさん、そして宣伝のれぼんちゃん、裏方の皆さんも、本当に本当にお疲れさまでした。また次回お会いしましょう!

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発行:Text-Revolution準備会
判型:456P
頒布価格:1200円
サイトText-Revolution準備会
レビュワー:凪野基

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