Transporter ~Save the Princess~


鉄道貨物輸送を生業とする「輸送管理官(トランスポーター)」。
カートはその職業に誇りをもっていた。帝国が倒れ、世の中が変わろうとしているとき、カートは厄介な荷物と巡りあう。
(サイトより転載)

sanka

Transporterシリーズの5巻目にして最終刊。
このシリーズは、鉄道から始まり、鉄道に終わる物語です。
車窓から見る景色が移り変わっていくように、動乱の世において、主人公のカートが置かれる状況は変わっていきます。
変わらないのは、彼の“鉄道輸送管理官”としての矜持だけ。
この一本の志が線路のように真っ直ぐ通っているから、彼の心に導かれるようにして安心して読めるお話です。

変わっていくのはカートの状況だけではありません。
カートが預かった“荷物”皇女メリーを取り巻く人たちの生き方も、どんどん変わっていきます。
革命直後の世を生きる人々を描いた、群像劇とも言える濃密な内容の物語です。

帝国の皇女メリーをめぐる駆け引きは、この巻でとうとう決着が付きます。
固唾を呑んで彼らの行方を見守ってきたからこそ、ラストシーンはとくに感慨深く、
まるで大スクリーンの映画を観ているかのような気分になりました。
ラストだけでなく全編を通して、映画でないのが惜しいほど奥行きを感じられます。
まさに歴史の一篇です。

革命、王室、歴史的過渡期、そして、鉄道。
これらの言葉にときめくなら、ぜひお薦めしたい1冊です。


発行:MisticBlue
判型:A5 64P 
頒布価格:300円
サイト:MisticBlue

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