おとどけ!ピザバッツ

無軌道な若者から食の安全を守れ! 武装デリバリー・サービスの活躍を描くガチ・バトルアクション!

sanka

トオノキョウジの新作「おとどけ!ピザバッツ」を読んだ。
ストーリーは、一言でいえば、「モラル無き若者へのお仕置き」モノ。もっと具体的にいえば、最近よくニュースに聞く、飲食店等で裸体写真をとって…という、あの時事ネタだ。
作者には、同じく時事ネタの「俺たちのザ・ソウ」があるが、こちらはもっと大きな「悪」を扱っており、現実において、そのからくりがよく見えないものだから、何だか悶々とした感想だけが残ってしまった。でも、今度のネタは、我々読者が加害者に対して感じる「憤り」も身近であり、心理描写が丁寧かつ真摯であることも手伝って、面白い。
ただ、不安もあった。今回の武器は巨大麺棒。加害者が「未熟なガキ共」とくれば、結論として「若気のいたり」で済ませるのか? などと考えていたら、とくに物分かりの悪いヤンキーが一人、あっさりとぶっ殺されてしまう。これにはちょっと驚いた。人殺しはないだろーな、と高をくくっていたからである。
作品後半、生き残りヤンキーのセリフが何ともやるせない。
「それでまあ大体わかったんよ。何やったら連中にぶっ殺されて、何やったら生き残れるかってよ」
彼らと主人公側(或いは読者側)の思考過程の違い… このシークエンス、秀逸である。物語のラストでは、またまた「巨悪」が出てきて問題の本質を撹乱してしまうけれど、それはあくまでアクション・ノベルとしてのクライマックスだ。作品のテーマに対する回答は、上記のセリフで語り尽くされていると思った。

いかにも同人誌的な「マニアックさ」を好む向きならいざ知らず、エンターティメントとして面白いものを、とお探しなら、この一冊をオススメしたい。


発行:クロヒス書房
判型:文庫版 132P 
頒布価格:500円
サイト:クロヒス諸房
レビュワー:大和かたる

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