駆け引きアンソロジー「ステルメイト」
男女による非恋愛・未恋愛な駆け引き、腹の探り合いをテーマとしたアンソロジー。
・灰色のレイニー 土佐岡マキさん
「駆け引きとゲーム」で物語が進む、まさにこのアンソロジーの王道を行く物語。
奇妙な腐れ縁を持つ二人のやりとりから、徐々に見えてくる背景。そこからは冷たい雨の温度、独特の匂いと湿気が感じられるようでした。
二人の勝負の結末はどうなるのか……。
ちりばめられたヒントを拾えるかどうか。読者への挑戦状もチラチラと見えるようなお話でした。
・北の森に梟が鳴く 藤原湾さん
異国風の国を舞台に権謀術数が絡み合うファンタジーです。
謀の応酬の中でじわじわと見えてくる、それぞれの国の事情。――敵は国の内にも外にも存在する。そんな中、二人が選び取った結末とは?
タイトルが浮かび上がる物語の運びを味わっていただきたいお話です。
・ラブラドライトの献身 志水了さん
事件の真相を追いかけていく近未来物。湾岸地区を舞台にした警察SFです。
VR技術を駆使した世界観がとにかくかっこいいのです。そして背後にたゆたう滅びの気配がたまりません。
内通者は誰なのか? そんな緊迫感を楽しんでいただきたいお話です。
・スケジュール・パズル 森村直也さん
誰だって早く帰りたい。でも、仕事が帰らせてくれない……。そんな身につまされるテーマでスケジュールと戦う現代物、お仕事物です。
それぞれ事情はあるけれど、そこに優先度をつけるわけにはいかない。だから――。
読み終わったらきっとほっと一息吐けるはず。
・青髭に捧げる狂詩曲 立田さん
一風変わった世界を舞台に「楽器」として生まれた私と、そのオーナーの思惑が交錯する物語。ファンタジーの香りがするSFです。
楽器とは? 青髯の妻とは? ぼんやりとした見えない世界に私たちも放り出されたような気持ちになります。
ベールが剥がされるように少しずつ見えてくる物語の真相を、楽しんでいただきたいお話です。
・(RE)START 汐江アコさん
冴えない作家と新担当による探り合いが楽しい現代物です。
突然部屋まで押しかけてくる新担当。彼女は一体何を考えているのか? 部屋には入れたくない。ならばどうするべきなのか?
守りに入ってしまった作家と先へ進みたい新担当。その攻防が止まっていた時計の針を進める――。そんな読後感のよい物語です。
発行:藍色のモノローグ
判型:文庫(A6) 264P
頒布価格:800円
サイト:藍色のモノローグ
レビュワー:藍間真珠