鉱石展示室


《きらきら あります》
琥珀糖専門店「ジオード」の店主・今市琥太郎と店に訪れる人々を描いたきらきらのお話。

この作品には作者のこだわりが随所に込められている。
演劇、作者の好きな作家、漢字の美しいルビ振り、そして鉱石に琥珀糖。
予約特典となった琥珀糖をはじめ、ジオードのロゴを印刷した紙袋やその色までメタレベルである現実世界にまで及ぶ徹底したものである。

徹底したエンターテイメントであるこの作品は居心地がいい。
店長の今市氏とともにお客を迎えるように、するりするりと物語が入ってくる。
特に気に入ったのは、第4話のご隠居さんのかつての恋物語と、演劇関係で出演の多かった待音(まちね)君の立ち振る舞い。そしてエピローグのかつての友人との再会。
うわー!と深夜に身悶えしたのは秘密である。
そのくらいきらきらだった。

作者の波水蒼さんは次回作をどうしようと悩んでらっしゃるようだが、ぜひ書いて欲しい。
続編でも、まったく違う話でも。


発行:琥珀舎
判型:文庫 130P
頒布価格:500円
サイト:琥珀舎
レビュワー:三日月 理音