超絶変身ユカリオン1(2)


「お願いアルファ、大切な人を守る力を私に貸して!」
90年代風変身ヒロインライトノベル
ヒロイン☆ふぇすた!サイトより)

sanka

これはまた、何と可愛らしい作品だろう。
通常、同人作品には、外向けの「作法」を度外視した「オレ様節」的なものが多い。それは独特の「臭み」を発するが、好きな人にはそれが良いらしい。(と私は勝手に思っている)
 でも、「超絶変身ユカリオン」はそんなくくりの作品ではない。自己を滅し(?)、ジャンルへの愛に沈みこむことで生まれた「ラバーズ」のための作品。ジャンル・ファンの琴線に触れるアイテムを散りばめた愛らしくも熟成感のある好篇だ。
 お話は子供番組の「変身もの」「魔法少女もの」そのもの。セリフ回しも、ストーリー展開も、このジャンルで完成されたフォーマットを丁寧になぞり、そこからハミ出すことを避けている。
 読みながら、テレビアニメ「超絶変身ユカリオン」という番組が本当にあるような錯覚に陥った。服部匠さんはその番組の「原案・シリーズ構成」にクレジットされていて、何回かに一度はシナリオも書いていて、この本はファンの希望に応えて、第一回放送分のDVDを見ながら書き下ろしたノベライズではないか、と……
 そう。ユカリオンの面白さは、この「色々、メディア・ミックスされている」っぽい「奥行き」にある。フィギュア化されても、女児用オモチャ化されても、劇場アニメ化されても何ら違和感のない世界。
 きっと、作者の中のユカリオンは、たっぷりの愛を受けて健やかに育っているのだろう。母親(作者)だけではない。読みさえすれば、我々もつい応援してあげたくなってしまう、不思議なアイドル感のある作品。
変身少女アニメ、特撮ヒーローファンには必携のコレクターズアイテムだと思う。


発行:またまたご冗談を!
判型:新書版 92P
頒布価格:200円
サイト:またまたご冗談を!
レビュワー:大和かたる

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