天星鉱石店


血石に導かれて、二人の少年が辿り着いたのは鉱石を扱う店「天星(あまほし)鉱石店」。二人の望むものはここで得られるのか―――「天星鉱石店」
瘴気とスコールから逃れるために、人類は高層建築物に住むようになった―――「ふたつのグラス」
バイト先から、マジョさんのところへお使いを頼まれた―――「白魔女の庭」
三編からなる短編集。

光溢れる外界を透かし見させるドアの写真を配した表紙を開くと、それぞれに違うテイストを持つ短編が収録されている。

「天星鉱石店」は、どこか宮沢賢治や稲垣足穂を感じさせるテイストのファンタジーである。
言葉の選び方や、“食べるとソーダの味がする天河石”といったディティールの描写の細やかさで、ぐいぐいとその世界に引き込まれる。

うってかわって、「ふたつのグラス」は近未来とおぼしき世界が舞台となる。
世界の描写と、「男」と「画家」のエピソードが淡々と語られるのだが、その向こうに読者は語られぬドラマを見ることができる。

最後に置かれた「白魔女の庭」は現代物。
ほっこりとした気分で本をしめくくる。

全体を通して、あざやかな色彩が印象に残る。
「天星鉱石店」での鉱物の色。「ふたつのグラス」での画家の作品。「白魔女の庭」でのハーブ。
それぞれが印象深く描きだされている。おそらく、作者の方が写真も手がけられるからであろう。
こうした色彩の描き方ができる書き手さんは貴重ではないだろうか。

文章が読みやすく、テイストの違う作品を書き分けられる、これからが楽しみなサークルさんがまた増えた。


発行:gladiolus
判型:文庫(A6) 56P
頒布価格:700円
サイト:ichiko nishikigawa – Japan Chiba | about.me
レビュワー:みちる