ゆきのふるまち


舞台は架空のまち。
世界はいくつもの町でできていて、町の決まりに従って、みんな不自由なく暮らしています。
生まれた町から外に出るにはとてもお金がかかるので、ほとんどのひとが、生まれた町で一生を過ごす。そんな世界のなかの町のひとつ。
いつも雪が降っている「雪町」で暮らす、表紙の女の子3人が仲良くなるお話です。
(※作者様ブログより転載)

sanka

雪が降り積もる“雪町”でいっしょに暮らす、三人の女の子の物語。
隣町の“木町”にある木組みのメリーゴランドに憧れながらも、日々をやわらかくあたたかく、大事な友達のことを想って過ごす彼女たちの丁寧な描写がぐっときます。大事な友達のためにコーヒーを淹れたり、ごはんを作ったり、お洋服をあつらえてみたり…そうしながら日々の中の小さな幸せと大切に向き合う彼女たちの姿は、日ごろ大きな幸せばかりついつい求めてしまう自分には力強く、尊いものに思われました。

どことなく閉鎖的な世界ではあるけれど、それを自然と受け止め、身の回りの幸せを大切にして生きる、という感じがひしひしと胸にきて、ページを繰る手が止まらなかったです。ただやさしい、あたたかい、だけでなく、回避することのできない悲しい出来事も待ち受けていますが、それも含めて素晴らしいお話でした…。そして、最初のページに「ん?」と思っていたんですが、最後まで読んだ時の「そういうこと…!」と思わず手を打ちました。そしてどうしようもなく切なくなりました…。

しんと静まり返った空気の冷たい夜に、心安らかに読みたい物語です。


発行:象印社
判型:文庫(A6) 68P
頒布価格:450円
サイト:くまっこにっき。
レビュワー:世津路 章