七都2

arasuji
ついに戦場に出ることを決意する七都。敵将の煌と刃を交わす。七都が「この街を守る」と強い想いを語るほど、煌は屈服させて自分のものにしたくなる。他方、負傷した聖羅はひっそりと病室で尚釉に過去を話し始めた。過酷な子ども時代と、非道な仕打ちを経験してきた彼女は……

※この作品の過去の投稿
 七都シリーズ

sanka

kansou
私はどうしてこの作品にこんなに弱いのか。七都が「私は守りたい」と叫ぶたびに涙腺がゆるむ。いつの間にか、七都ではなく聖羅に近い立場にかったのだなあと今更思った。社会活動に関わったことがあると、純粋さが眩しすぎて泣けます。もうこんなこと言えない大人になっちゃったと思いました。

そしてこの作品は母娘の物語なのです。「母に愛された娘」の七都から、「母に愛されなかった聖羅」は期せずして母を奪うことになり、その母に成り代わるように、七都を愛することで、自分を満たそうとする。この母娘の繋がりの環は、愛というか呪いというか……。
母娘は個人を超えて、何代も続く因縁や社会構造の中で、囚われてなんとか愛を探そうとする。私なんかは「でもな、悪いのは大将軍やろ?ものわかりいい父親ヅラしやがって」と怒るわけですが、聖羅は「父の娘」だったわけで、そこから「娘の母」になろうとする。これえぐい話です。

私が「七都」を愛読するのは、社会と繋がりのある作品だからです。個人の想いを超えた、歴史や社会構造のの中でもがく人間の姿が、私は好きです。矛盾や解決不能な問題があるからこそ、答えのない問いを小説は突きつけると思います。
その反面、出てくる男性キャラが、みんな強くてチートなところが、正しく少女小説だと思いました(笑) これはね、お約束ですよね。そこがないと、ただの辛い小説になります。きちんと萌えや甘さやゆるさも残してあるところが、読者にページをめくるモチベーションになっていて、良かったと思います。

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発行:灯
判型:新書版 194P
頒布価格:700円
サイト:
レビュワー:宇野寧湖

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