潮伽縮む里

arasuji

言葉を遊ばせたSFのようなもの。

※虫が苦手なひとは注意です※
(本文に虫要素はあんまりありませんが)

〈章タイトル〉
巻頭ふろく

ペメロペイア

贋金

ガリレイ

(第4回Text-Revolutions Webカタログより転載)

 

kansou
フルカラーのトレペカバーにこれまた美しいイラスト(和紙? の不思議な風合いの紙に印刷されているのです)、折り返しにはリアルタッチの虫のイラストと、美しさとどこか不穏さが漂う装丁にまず、手に取った瞬間からわくわく。
わ、わ。そしてこの「潮伽縮む里」というどこか意味深にも思えるタイトル。
手に取った瞬間のワクワクもそのままにページを開けば、ますますワクワクの言葉の宇宙に引きずり込まれる不可思議でキュートなキヨムさんワールドが広がっているのです。

巻頭ふろく(この言い方が楽しい!)は短歌
「ぼくたちは近づきすぎた月のよう 月って? 宇宙で孤独で楽しい……」
キヨムさんのうたのもつ、ポーンと読み手を異なる世界へと連れ出すスケール感が一冊の中で自由自在に描かれていて、宇宙にするりと吸い込まれるよう。

ころころと不思議なリズムと言葉遊び、フックが散りばめられた言葉たちに惑わされるうち(好きな短歌が沢山あるけれどぜんぶ引用したらねたばれになってしまう!笑)、散文に戯曲、手記(?)とめくるめく言葉たちは頁を自在に行き来し、読み手のわたしを惑わすようにしながら自在に宇宙を旅する。
なんとも不可思議で愛おしい言葉の小宇宙に連れて行かれる、キヨムさん流SF。この捉えどころのなさすら楽しいのです。

さてはて、潮伽の里は本当に縮んでいるの? 宇宙船から降りてきた彼は? 真珠博士の謎は? 不可思議は不可思議のまま、キヨムさん流実験小説は読み手を惑わせたまま幕を下ろしていくのです。
これは宇宙のどこかにある潮伽の里のポストから届いた手紙なのではないだろうかと、本当にこの不思議な世界を旅しているかのようなふわふわした心地がなんとも楽しい。掴み所のなさの中で時折すとん、と言葉が迫ってくるところがなんとも好きです。

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発行:cieliste
判型:文庫(A6)68P
頒布価格:500円
サイトcieliste
レビュワー:高梨來

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