エッセンシャル技使い


『あなたもこれで流れの技使いに』
ふざけた謳い文句を掲げた技使い訓練所。そこへ足を踏み入れた者は誰一人帰ってこないという。町長から調査を依頼された僕は、たまたま居合わせた流れの技使い二人と共に潜入することになり……
ライトな異世界ファンタジー
(ブックカバーより)

sanka

流れの技使いの“僕”がひょんなことから事件と戦闘に巻き込まれるお話です。
文章が一定の呼吸を保っていて読みやすく、するりと物語の中へ誘ってくれます。
“技使い”という興味深い職業についてもところどころで丁寧に解説され、興味を持って読み進めることができます。
序盤は訓練所に入り込もうとする技使いたちの慎重な歩みをはらはらと見守り、“僕”の視点とともにゆっくりと核心に近づいていくことになります。
その後の、ギリギリの中で足掻くように行われる戦闘は熱く、手に汗握ります。力を合わせて強敵に立ち向かう展開は燃えますね。
作者さんが戦闘シーンを書きたかったというだけあって、技と技のぶつかり合いの描写が気持ちいいです。

描かれているのは実際の戦闘だけではありません。ふとした拍子に、技使いたちの葛藤が吐露されます。
技使いとして生まれ、技使いとして生きていく運命を背負った彼らは、自分たちに力を求めて群がってくる人々をどう見ているのでしょう。
閉鎖的な造りの“訓練所”の建物が象徴するように、狭い世界に閉じこもり、狭い世界だけしか見ることの出来なかった人間たちの視界は、流れの技使いたちにはじれったいもです。しかし、“僕”ともうひとりの技使いは、ひとつのことに気付きます――その答えはぜひ本編で!

新たなものを手に入れて今後も活躍していくであろう“僕”の、あるいは他の技使いたちの話を、もっと読みたくなるような本でした。


発行:藍色のモノローグ
判型:文庫 100P
頒布価格:500円
サイト:藍色のモノローグ
レビュワー:

前の記事

鳥籠草

次の記事

雪行路