2020年10月9日 / 最終更新日時 : 2020年10月8日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 行方知れずの手紙に溺れて しどけない倦怠を、はためかせた黒絹のガウンに含みながら纏っていた。はだけた肩を直すには、物憂さがすぎた夜が落ちてきている。湯浴みの残り香は、麗人を魔物めいて匂い立たせる妖艶に気怠い空気を添えていた。麗人は真っ直ぐ机に向 […]
2019年9月1日 / 最終更新日時 : 2019年8月31日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 薔薇庭園に見る海 背の高い薔薇の木の下、冷たい石の褥に横たわり、麗人は一人だった。麗人の所有物である城、その敷地は車が通れる一本道を除いて薔薇園になっている。石畳に入ったひびからも新たな薔薇が咲き、薔薇以外の花は存在しない、豪奢な庭であ […]
2019年2月8日 / 最終更新日時 : 2019年2月7日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 彼はきっと、薔薇の城 乾いた病葉が、土の上を何処までも覆っていた。ひび割れた花壇の間、舗装されていた小径はかつての姿を忘れて寂しい色をしていた。獰猛な蔓薔薇に石畳の亀裂を絡められながら、溝から緑が萌えることはない。 朽ちた色彩の芯に略奪者 […]