手紙箱(140字の短い手紙)
【 それは炎のように 】
「涙で薄めたインクで手紙を書くの」そう寂しげに微笑んだあなたのインクは、儚く煌き、とても綺麗だった。
今、手の中にある淡い文字の手紙からは、震えるような呪詛が聞こえて、私はそれを燃え盛る焚き火の中に放り込んだ。
燃え上がる手紙は眩くて、たいそう美しかった。
【 インク 】
ふと気づけば、ノートに赤黒い染みが広がっていた。血を流したのは、ペン先で傷付けられたノートか、はたまた潰れたペン先か。それとも、千切れた私の心だろうか。
染みを指でなぞり、用意していたナイフで、書き上げたばかりの遺書を切り裂き、屑籠に捨てた。指先は、美しい紅のインクに染まっていた。
【 白い棺 】
僕の涙と後悔は、白い紙の上で躊躇った分だけ、青いインク溜まりに変わった。そのインクの湖底へ、僕は祈りながら君を沈める。
ゆらゆらと揺蕩いながら、君は蒼い文字の闇に呑まれていった。
さよなら。もう思い出さないように、僕は白い封筒に、君が眠る湖ごと押し込めて封をした。
【 流れ星 】
郵便受けを開けて、手紙を取り出す。ダイレクトメールと、一通の封書。四角い鉄の形の闇の右隅で、ちかりと何かが閃いた。覗き込めば、それは小さな星で、ちかちかと瞬いたあとで、不意に消えてしまった。
家に戻り封を切ると、白い封筒の中からは、流れ星の欠片がひとつ転がり出ただけだった。
【 プラネタリウム 】
私信
ねえ、君、この間よこした手紙の洋墨、どこで手に入れたって?
君は夜光塗料だなんて云っていたけど、とんでもない。まるでプラネタリウムだ。何が光ったかって。決まってるじゃあないか、君の文字さ。たまには下手くそな文字も良いものだね。なかなか綺麗で、見惚れた。
また、待っているから。
サークル情報
サークル名:カラス機関
執筆者名:中村ハル
URL(Twitter):@nakamurahalu1
一言アピール
日常と非日常の境が溶けて混じる、そんな雰囲気の話を書いています。オカルトファンタジーだったり、美少年と幻想だったり。どうぞ、ゆるりとお楽しみくださいまし。

