私の鱗
左頬にできた吹き出物は、つぶれ方が悪かったのか、かさぶたを経てシミになってしまった。
鏡で確認すると、小指の先ほどの皮膚が茶色く変色している。
ある日、ふと触れたらするりと滑らかな感触がした。首を傾げつつ、もう一度指先でなぞる。少し硬くて、つるつるしている。
またかさぶたになったのだろうかと鏡を見たけれど、普通のシミだった。触って確かめても普通の皮膚だ。
そのときは気のせいかなと思った。しかし、それが何度も起こった。
鏡で見てもシミなのに、無意識に触れたときだけ、硬くて滑らかな……何だろう? 周囲の皮膚より少し盛り上がっている。感触は爪に似ている。でもこれはきっと鱗だ。
私の鱗。
そう考えると愛着が湧いてきた。
鱗になる頻度はだんだん高くなっている。魚かトカゲか、私は何になるのだろう。
サークル名:オレンジ宇宙工場(URL)
執筆者名:葉原あきよ
一言アピール
超短編を書いたり、豆本を作ったりしています。このくらいのサイズの話が多いです。