何もない町
「何もない町ですよ」
「取り残された町ですよ」
「人が増えない町ですよ」
機械仕掛けの人形のように、そう口にしていた。
石畳にレンガの家。まるで異国にいるように感じさせるこの町に来た理由は、特にない。彷徨っていた末に辿り着いただけである。
今からここが、新しい住む場所になる。
空き家になっていた、この町では一般的な家を借りることにした。家具がそのまま残っていたその家は、とても綺麗にされていた。
名前のないこの町を感じるため、散歩がてら外に出る。
人々はそこにいる。楽しく生活をしている。
ここには穏やかな生がある。
やることもなくなったので、家で過ごしていた。
動いている気配がない。過去がない。
ここには音がない。
いや違う。
ここには静かな環境がある。
他人に流されない自分がある。
未来を作っていける。
生きていくには素晴らしい環境ではないか。
これからは、ここに住んで、ここで書きものをして、自分だけの世界で生きていくことにしよう。
そういえば、この町の名前がなかったな。
誰も言わない。どこにも書いていない。
だったら、自分で名乗ってしまってもいいではないか。
名前を考えるために紙とペンを広げ、思うままに書き出していく。
白い空の広がるこの町の名前は……
サークル名:シュガーアイス(URL)
執筆者名:まつのこ
一言アピール
えっちな創作BLから王道ファンタジーまで、小説がたくさんあります。それ以外にも、畳やマスキングテープのグッズもあります!……と書きつつ、こんな不思議なおはなしもあります。