一匹狼(2)
一匹狼と子連れ狼の戦い。はたして結末やいかに。
(作者サイトより引用)
愛と憎悪を、孤独がつなぐ。
小さな小さな手製本です。とても短い物語ですが、読み終わった後しばらく呆然とし、それから微かに涙が浮かんできたことに気付きました。
読み終えてのち胸に去来する、もだえるような鬱屈を一体何と名付けたら一番しっくりくるのだろうと思うのですが、恐らく私の答えは「無常」です。全てが憎しみのために、つまりは愛のために、そしてそれを守ろうとするゆえの憎悪のために、軋みながらすれ違っていく。それに無常と名付けようとする行為は愚かなのかもしれませんが、生滅流転とはもともとこういうものなのではないでしょうか。
であるからこそ、悲しく、やるせない。
物語は非常に淡々と進みます。もともとボリュームもありません。だから数分で終わってしまう。けれど胸に残る鮮やかな景色はずっとずっと色褪せずに残ります。
カタルシスとは物語の長さではなく、刺さる深さによって与えられるという当たり前の結論を、再認識することも出来ました。