鳥小説アンソロジー よりどりみどりに鳥

飛ぶ鳥、飛ばない鳥、歩く鳥、泳ぐ鳥。
野鳥に渡り鳥にコンパニオンバード。
SF、恋愛、ライトノベル。
鳥の魅力がよりどりみどり14作品ぎゅっと詰まった、お値段以上に鳥なアンソロジーです。

sanka

鳥可愛い鳥! ということで、専ら鳥についての感想になることを予めご了承頂きたく……。

「マフィンの歌」
ほのぼの童話調。塔に住む魔女が気になるマフィンはじめとする鳥達と、マフィンと会話出来る人間のお姉さんのお話。
一生懸命のマフィンが可愛い。鳥がたくさんでてくるので、鳥充出来ます。
キツツキのホラ吹きなかみさんが気になる次第。

「空にいちばん近い塔」
一羽でいたカラスのロイと、ロイと友達になったカラスではない鳥のカイのお話。
都会に住む鳥のお話なので、都会ならではのなんともいえない苦労もあり……。少ししんみりとしつつ、暗くなりすぎないラストが印象的です。ロイとカイ(と、猫のミケちゃん)の屈託の無いやりとりがとっても可愛かったー!

「遠い昔、鳥だった頃」
見た事も無い鳥の夢を見た、月に住むセアラが地球に鳥を見に来るちょっとSFっぽいお話。
野鳥の悲哀と、しんみりしつつもどこか希望を感じさせるラストが印象的なお話でした。
アンドロイドのペティがなんだかツボでした。

「翼の王国の守り神」
野鳥の楽園バードニアに人間が紛れ込み、時同じくして空気安定化システムに不具合が生じ、それを解決する為にすずめのジョウ、くじゃく将軍、人間のリクが最果ての塔を目指す、RPG風のお話。
野鳥の楽園なので鳥がたくさん! 中でもくじゃく将軍がとにかくかっこよくてツボでした。

「君を欲すれば欲するほど、僕の心が紅黒に染まって崩れていくー白鳥と黒鳥の御伽噺ー」
白と黒の仲睦まじい二羽の鳥と、それに重ね合わさる家族のお話。
全体としてしんみりとした空気があり、どこまでも深読み出来そうなお話でした。
白と黒のコントラストが印象的で、大きな鳥はとりあえずもふもふしたい(?)

「鳥居さんちの文鳥さま」
エミューを名前の由来に持ち、鳥と会話できる恵海と、偶然出会ったお兄さんとの鳥スタンプラリーデートのお話。
文鳥飼いとしては、文鳥の話というだけでにやにやがとまりません。
軽快な文筆で、時折にやりと出来る描写もあり、楽しく読み切りました。

「ヒヨコノクニ」
ひよ子の前に現れた、死んだはずにひよこのひよざえもん。彼により、街がひよこに侵略されてしまうお話。
とりあえず、ひよこがみっしりぎっしりで想像するだけで可愛い。もふもふ。
ひよざえもんが、小さいひよこの癖にかっこよかったです。

「野鳥市場」
女性を愛せない主人公が、手に入れた野鳥に初めて愛情を知り、その結果とる行動についてのお話。
色とりどりの鳥が、飛び回るシーンが印象的でした、
最初と最後の文など、どこかかっこいい文体と空気のお話でした。

「白い帽子と水平線」
奇術師の先生の元、マジックショーの鳩として仕事する七月(ジュライ)。仕事先の舟の上で先生のいつもと違う一面を知り……というお話。
冒頭の七月と、お隣さんの九官鳥の九太とのやりとりがまず微笑ましい。九太のナッツに関する台詞が可愛いです。
ほんの少し不思議な部分があり、それの現実への入り込み方が好みでした。

「百合のように白く」
ちょっと不思議な商売をしている店主と、彼が助けた白隼リリアーレ。そして二人の暮らしを脅かす魔術師のお話。
とりあえずもう、白い鳥は無条件で可愛いと思います。もふもふしたい。
リリアーレと店主、二人のお互いに寄り添いあっているところが印象的でした。

「満潮に沈む島」
UMAシーカーのローグマンが、絶滅したはずのオオウミガラスを探すお話。
ハードボイルド系翻訳物のような硬派な印象のお話でした。
壮大なお話の中、頬をつっつくオオウミガラスが想像すると可愛かった。

「ザクロ一粒」
感情や心が色々とどうしようもなくなってしまった「私」と、彼女が拾ったムクドリのキィちゃんのお話。
赤いザクロとムクドリの黄色い嘴が印象的。ムクドリも可愛い。
畳み掛けるような文体と、17歳のどうしようもないような感情がうまく混ざり合っていて、ちょっと息苦しくなりました(いい意味で)

「バーズ・ワーズ」
鳥にまつわるショートショート集。つまり、鳥がたくさん。全体的にほのぼの。空から鳥が降って来たり、水浴びしていたり、鳶が鷹を生んだり。
「理想郷」と「リップサービス」が好きです。あと、「泥沼と掃き溜め」の水たまりで水浴びする鳥が想像するだけで可愛過ぎる。


発行:人生は緑色
判型:B6 232P 
頒布価格:1200円
サイト:アンソロジー特設サイト
レビュワー:小高まあな

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