夢守人黒姫 Love in a mist


「貴方の夢に、お邪魔させてもらう」
 かつて人気子役として一世風靡した過去を持つ少女・藤崎綾乃。舞台への憧れを秘め、退屈で平凡な日々を送る彼女の前に、青い髪の少女・青子が現れた。綾乃はその日から、華々しい舞台の夢を見るようになるが、それは同時に、彼女の心と身体を蝕んでゆく悪夢でもあった。親友が教えてくれたおまじないに助けを求めた綾乃の夢に、巫女服の少女・黒姫が桜の花吹雪と共に現れた――。
 夢の秩序を守る夢守人・黒姫と、悪夢を植え付ける夢魔・青子との戦いと執着を描いた、夢幻想現代ファンタジー。

sanka

 夢を犯すものと護るものの、愛憎交差するドラマチカル・バトル。個性豊かなキャラクターたち、物語の(表向きの)軸になる綾乃の葛藤、また(本来の軸である)黒姫・青子の因縁深き決闘など、読みごたえバッチリなのに軽快に読めました!

 もうこのドロドロ…たまりません。人が誰しも持っている負の感情を抱え鬱屈と日々を送る綾乃と、彼女の助けになりたい一心の親友・昌子。特に昌子の気持ちが健気で涙腺が緩むのですが、これが報われず…素直に受け取れない綾乃の想いもわかってしまうため、中盤は非常に悶々しながらページを繰りました。

 その暗雲を爽快に立ち捌く夢守人・黒姫。そしてそれこそを待ち侘びていた夢魔の姫・青子。衝突するふたりの間に散るのは、まさしく憎悪と愛情の苛烈な火花。その激情っぷりに、凄まじく胸を鷲掴みにされます。もっと彼女たちの活躍を読みたくて物足りなく感じてしまうくらい!

 黒姫がその名に秘めた想い、青子が黒姫を求める理由。決して譲らない両者の闘いをぜひご覧ください!


発行:またまたご冗談を!
判型:文庫(A6) 96P
頒布価格:300円
サイト:またまたご冗談を!
レビュワー:世津路 章