「技術は死ぬのよ、誰かが守ってやらないと。
 だから私は作り上げたの。言葉通りの殺人(キラー)コンテンツをね!」

 真夜中の開発室で、新人経理OL増間佳(ますまけい)のスパイ行為を目撃した、
 三十路プログラマー安土竜吾(あづちりゅうご)。

 ある男の死を追っていると主張する彼女と共に、
 竜吾は東京ビッグサイトを襲う謎の銃撃事件に巻き込まれる。

 準天頂衛星ビジネスを一変させる、新技術の 『鍵』 とは。
 かつて憧れた女性が操る、『架空の銃』 と 『曲がる弾丸』 とは。
 そして、仮定と否定の向こう側にある、佳の真なる想いとは。

 彼女の n が3以上の時、竜吾は真実の証明に挑む。

 これは、謎と願いの解(こたえ)を求める、
 インダストリアルスパイラブハリケーンである。
(※サークルサイト様紹介文より転載)

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sanka

まず、最後の挿絵は卑怯だ。卑怯すぎる。断言する。

そして、一気に読んだ。読んでしまった。このP数(280)なのに、途中眠くなることもなく、サクサク読んだ。白いわけじゃないのに、この時間で読み終わったのはかなり驚きだ。(多分、3時間かかってない)
それだけ読みやすく、また、面白かったことの一つの証左だ。

「こ、これはラブコメか!?」な冒頭からまず謎が現れる。
ミステリーでもあるが、主人公達の関わり方はごく自然で、産業サスペンス(というのか?)の色も濃い。

けれど、難しいわけじゃない。主人公の竜吾は少しだけ技術にプライドを持ったどこにでもいるSEだし、その自覚故に焦燥があり、劣等感があり、でも30半ばで草食系と呼ばれてしまいそうなふつーのありがちな男性だし、なんというか。
おいら(30後半SE職)の回りに掃いて捨てるほど居そうな普通の男性なんですわ。

技術職というのはもうなんだかみっちり感じるけれど、内容自体にも難しい話はさほど出てこない。若干専門的な内容については、タイトルのフェル・マーさんがついていかないからちゃんと解説してもらえる。
ちなみに、コレに比較的近い仕事をしているおいらはものすごく呻ってしまった。(技術的に)本気で難しいぞ、コレ。

もう一人の主人公、フェル・マーこと佳さん。純朴、Fail Markの単なるどじっ娘にしか見えないのに、何故か初っぱなから謎をふっかけてくる。もちろん天然っぽい。
この子もね。いたなぁってつい思ってしまう感じというか。いや、天然すぎるところは物語ですが。こんな子がいたらね。
草食系の男性陣がマジで気を引こうとしたりするんですよね!

キャラクターに対するリアルとフィクションと魅力さが、おもしろさを増している要素の一つ。

見落としてしまいそうな緻密な設計は他の物を読んだときにも感じたけれど、一層引き立っていた。物事と人物の相関図を書いたら……細かく、緻密に、けれどスッキリと綺麗な図形ができあがる気がする。無駄がなく、不足もなく、冗長でもない。
途中何度「すごいわー」言ったことか。
物語最大の謎も、「無理だわー」思いつつ、「コレなら出来るかも」と思ってしまうリアルさ。「無理だわー」部分は、「まぁ、ラノベだしね!(褒め言葉)」で十分収まるだろう。

ミステリーを主食にする友人に読んでみて欲しいと思ってみた。今のところ叶うあてが無いのが残念だ。

そして、エンディング。
どこにもほろっとする要素がないはずなのに、つい、ほろっとしたのはココだけの内緒話。


発行:クロヒス諸房
判型:文庫(A6) 282P
頒布価格:700円
サイト:クロヒス諸房
レビュワー:森村直也