七都・1


動乱の時代に生まれ、革命に身を投じた少女達の友情、恋愛、成長を描く、架空革命少女小説。
長編少女小説です。

七都の抱える母親への葛藤。七都と触れあううちに、閉ざしていた心を緩ませていく聖羅。
群青とのたどたどしい恋。そして敵将、赤将軍煌との衝撃的な出会い。

テキレボWEBカタログにも掲載あり)

sanka

架空世界を舞台に、レジスタンスの英雄の娘・七都が成長していく物語。第1巻では七都が母と姉を失い孤独に苦しみながら、戦場に赴いて剣を手に取って戦う決意をするまでを描く。幼いが母親のカリスマ性を持つ七都が、危うくも可愛らしく魅力的。
もう一人のヒロインとも言える聖羅は、拭い去れないような重い過去を持つ。神に仕え微笑みながら、自己意思を殺そうとする。第1巻最終部での百合子との対決は見応えがあった。とにかく強く清廉な印象を持つ女性で、七都との対比が鮮やか。
サイドで進む月華の残酷なエピソード、颯爽とした赤将軍の格好よさ、群青の七都を見守る優しい視線も、物語世界の彩りを豊かにしている。圧政、虐殺、貧困などの厳しいテーマを中心に置きながら、牧歌的な場面も散りばめられており、読み進めやすい。
何より平易で過不足のない文章が読みやすい。粗もないわけではないが、手垢のつかない同人ならではの小説としてはベストの文体だと思う。新書サイズで200ページをこえるが、あっという間に読み終わり、ぜひ第2巻も読みたいと思った。
私が愛読していた頃の少女小説の持ち味をよく出していると思った。少女の家族関係を乗り越え、社会意識が目覚めるさまを描こうしている。同時に聖羅や月華といった「大人にならざるを得なかった女性」が登場するのも好感を持つ。これから三人がどう関係していくのか気になる。
第3巻まで出ているようなので、ぜひ揃えたい。はじめはオンラインで発表されたようだけれど、紙にして持ち歩いたり、他人に勧めたりもしたい。
私としてはこういう真面目で誠実な作品が好きだし、もっと増えたら若い読み手も広がるのではないかと思う。


発行:灯
判型:新書版 
頒布価格:700円
サイト:AKARI
レビュワー:宇野寧湖

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