青い幻燈
19世紀パリ、ラテン区。画家と詩人が同居する古いアパルトマンに、ひとりの少女がやってくる。ただグリゼット(お針子)とだけ名乗る彼女は、詩人がかつて作った物語のヒロインのようであり、画家が愛していた猫のようでもあり……。そんな彼らの前に、永遠の孤独と引き換えに芸術家の魂の充足を約束しようという謎の紳士が現れる。
一瞬に魂を燃やす若者達を描く56頁
(本の裏表紙のあらすじより転載)
19世紀パリラテン区のアパルトマンに或る日一人のグリゼット(お針子)志望の少女がやってきて、詩人と画家二人の若者の生活に彩りを加えることになる。この詩人と画家がなかなか素敵なペアで、どうでもいいけどなぜか吉田山田のイメージで頭の中で再生されてしまって(髪の色とかは逆かも?)何か好きでした。短編で、センスのある軽快な出だしの小説ながらはっとするような濃いテーマで進んでいって、第二章の「『世界の真理』と『刹那の悦び』についての問答」などは先に読んでいた「宴の火」を思わせるようなところもあって、こういうのがあるからこそ結末がありきたりに感じないのかもと。詩人のたましいは美しく、シネンドの理想は気高く美しく、絶対に誰にも否定できるものではないと思いつつ、この小説ではこういう結末でほっとするような、でもただ単純に終わるわけでもないところが読んでいてすっと心に入ってきて心地よく感じました。描写に力があり美しく深みのある並木さんの作品はこれからもいろいろ読んでみたいです。ありがとうございました。
発行:銅のケトル社
判型:文庫(A6) 56P
頒布価格:500円
レビュワー:匹津なのり