輝く瞳に夜の色

arasuji

その夜、竜は恋をした。
竜を召喚する女と、召喚される竜をめぐる情念。
第70回~84回フリーワンライ作品集短編連作。


kansou

 フリーワンライ(提示されたお題からひとつ以上のテーマを選択して一時間で文章作品を作成する企画)という企画に参加したもので編まれた竜と人間の掌篇集。
 各掌編のタイトルが象徴的で、目次だけでひとつの詩編になっています。
「オフィーリアが竜を召喚したらしい。」という一文から語りがはじまるものがたりはどれも、人間同士の憧れや嫉妬ゆえの葛藤や、「竜」という人間に帰属しつつ神性をたもつ存在への畏怖と愛情(といっていいのかどうか。これはもっとうっすらとしているけれども、確固とした、一切疑いのない感情だと私は思いました)が、きりっとした文体でえがきだされています。
 各篇・各篇ごとに楽しむこともできるし、掌篇すべてを一連の流れの長篇として読むこともできて、女ばかりの魔術師をあつめた施設、という世界観がいまだ隠し持っている奥行きをもっともっと知りたいし楽しみたい。
 探していた竜をテーマにした物語です。

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発行:夢想甲殻類
判型:文庫(A6) 42P
頒布価格:100円
サイトAnnalotte
レビュワー:孤伏澤つたゐ

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