ゆきのふるまち(2)
年中雪が降っている雪深い町——雪町。
ほとんどの人が生まれた町を出ることなく一生を過ごすこの世界で、雪とともに暮らす三人の女の子たちが、隣町に聳え立つ美しい木細工の観覧車に憧れながら、それぞれにいろんなことを感じながら成長してゆくお話です。
ほんのり優しくて、ほんのり切ない日常を綴りました。
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もくじ
・雪町
・蒼子ちゃんと香苗さん
・蒼子ちゃんとわたし
・鱒谷さんと香苗さん
・木町
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以前文学フリマにて「三題噺スタンプラリー」の景品として配布した掌編を大幅に加筆した作品です。
(第3回Text-Revolutions Webカタログより転載)
※過去の感想はこちら
ゆきのふるまち
架空のまちを舞台としたオムニバス形式の物語。世界は幾つものまちでできていて、人々はそのまちの決まりに従って不自由なく暮らしています。ほとんどの人が、生まれたまちで一生を過ごします。そんな世界にある「雪町」の丘の上には、広いお屋敷がありました。そこで暮らす三人の女の子たちの日常を描いたお話です。
いつもしんしんと雪が降る「雪町」で暮らす少女たちは、日々を穏やかに過ごしながらも隣町である「木町」のメリーゴーランドに憧れていました。三人それぞれが悲しみや悩みを抱えながらも誰かの優しさに触れ、日々をひたむきに前向きに過ごしています。大切な友達を思いながら流れていく時間。何気ないやりとりに滲むじんわりとした温かさが、それぞれの視点で語られています。もの悲しくも大事に胸にしまいたくなるお話を、雪の静寂、珈琲の香りが印象的に包み込んでいるようです。
切ない結末まで辿り着いた後は、装丁まで含めてじっくり味わいたくなる一冊でした。