蛇行する意識のほとりで君と那由多の夢を見る


 戦前と思われる日本を舞台にした怪奇・伝奇の掌編集。六人の「私」が語り手となり、六編のそれぞれの奇怪な出来事を描いていく。収録作は「白との邂逅」「文子」「繭還り」「花の女」「嘘爛漫」「黒との邂逅」

 戦前の日本を思わせる怪奇・伝奇の連作集で、収録作品のどれも完成度が高く、読み応えのある一冊。冷たい手で首筋を撫でられるような読後感が堪らない。それでいてどこか官能的で、タイトル通り、奇妙な夢の世界に誘われる。
 圧倒的な文章力。本格的な語り口。だからこそ恐怖に説得力がある。しかもその上、官能的。とてもマネできそうにないクオリティの作品。


発行:階亭
判型:A5 54P
頒布価格:400円
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レビュワー:唐橋史