半島と海峡の狭間で


1970年代初頭、韓国大使館員として中華民国・台北に赴任したキム・ギョンナムは、当地で日米両政府が大陸・中華人民共和国に接近し、台湾の国際的孤立が高まるという緊迫した状況に直面する。国民党一党独裁下の台湾と、軍事政権下の韓国。反共を国是とする両体制を行き来する彼は、しかし同じ資本主義陣営に属するはずの日米が大陸の共産党政権へと接近していく中、自国の、そして赴任先の政治体制に少なからぬ疑問を抱く。やがてその疑問は、彼の外交官としての立場を危ういものにしていき…。
冷戦体制下の1970年代、日米両国と同じ西側陣営に所属していながら、大陸中国との修交という選択肢をとることのできなかった反共分断国家・韓国の視点を通じ、東西両陣営の対立がアジアに残した痕跡を描写した作品です。

※サークル公式サイトより抜粋

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夜来香 中国短編小説集 一より「口琴」(2)


民国期の中国大陸。横暴極める日本人の振る舞いに憎悪の念を抱きつつも、北平(現・北京)で起こる激しい抗日運動の行く末に不安を感じた丁安遠は、その争いから身を遠ざけるようにして漢口へと移り住む。帽子屋の家に間借りした彼は、そこで毎朝、隣家から口琴(ハーモニカ)の奏でる音色を耳にするようになったが、しかし、その口琴の音色には、いつも曲の途中で演奏が終わってしまうという特徴があった。しかも、その口琴を奏でる者について、漢口の住民は誰もが無視を決め込んでいる。やがて安遠は、周りの住民から遠ざけられている口琴の主と接触する。その主は、上品な雰囲気をたたえた女性だった…。

※過去の感想はこちら
 夜来香 中国短編小説集一(1)

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妖都上海のでぶ女


巨大な蝸牛に似た階差機関「転輪聖機」を中心に座する妖都上海。その一角で育つ少女雪娥の悩みは迫ってくる纏足への恐怖だった。

「私は四つの時にやったの。覚悟しておくことね」

「見なさい、私の足、こんなに小さくて可愛いの」

「虫さされよ。たいしたことないわ」

 雪娥にはよく解らない言葉が弔問客や父母たちの間で飛び交っていた。妊娠、子供、不義、密通、自決。

 赤い籠に乗せられて、英蓮は知らないお家にいってしまった。
第十八回文学フリマWEBカタログより転載)

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さんた・るちやによる十三秒間の福音(2)


舞台は近世初期、キリシタン弾圧の嵐吹き荒れる長崎。
長崎奉行所同心の山中孫四郎は、その剣の腕を見込まれて、
キリシタンたちの斬首を執り行うことになる。
そして孫四郎は刑場に引き出されたキリシタンの女、
「るちや」の最期の願いを聞き届けるのだが――。
迫害と救いの残酷を描く表題作をはじめ、
『平家物語』の「重衡被斬」に取材した伝奇短編『或る罪人の死』と、
チャップリンの名作映画『モダン・タイムス』を、
幕末の上野戦争を舞台に翻案し、
維新というモダン・タイムスの黎明に立つ二人の絆を描いた『smile』の計三編を収録。
サークル「史文庫~ふひとふみくら~」初の歴史・伝奇小説短編集。
(著作者様サイトより転載)

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シタルキア創国記序章 自由の翼 


異母兄アスファーンによって追い詰められ、虐げられる王子エルシアン。愛していると嘘を重ねながら彼を翻弄するアスファーン。二人の間に横たわる、愛と憎悪が運命の輪をまわす。大河長編・異世界架空歴史物語。
(著作者様サイトより)

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出雲残照


戦乱の大陸を捨てて海に漕ぎ出した張旦は、東海の倭国に辿り着く。そこで彼が出会ったのは聡明な王「イズモタケル」だった。彼の治めるイズモの地で、張旦は平安な暮らしを手に入れるが、しかし、そのイズモにも戦火が迫る。大軍を率いてやってきたのはもう一人の「タケル」――ヤマトの皇子「ヤマトタケル」だった。

サイトで公開中の表題作に加え、web拍手で限定公開した続編『それからのチタリ』、さらには、神功皇后の新羅征討までの数日間を描いた書き下ろしの新作『息長帯比売』も収録。

(創作文芸見本誌会場HappyReading より転載)

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さんた・るちやによる十三秒間の福音


舞台は近世初期の長崎。吹き荒れるキリシタン弾圧の嵐と、殉教者たちの姿を刑場の役人たちの視線から描く表題作をはじめ、『平家物語』屈指の名場面「重衡被斬」に取材し、南都の夜を描く『或る罪人の死』、チャップリンの名作映画『モダン・タイムス』を幕末の上野戦争に舞台を移して翻案した『smile』の三作品を収録した歴史と伝奇の短編集。

(創作文芸見本誌開場HappyReading より転載)

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総督と画家 孔雀の羽飾りの帽子をかぶった男のヴァニタス


17世紀初頭、東アジア交易によって黄金時代を迎えたオランダの都市デルフト。
裕福な商人の子でありながら、駆け出しの肖像画家として工房に出入りするクラースは、バタヴィア総督ヤン・ファン・アメルスフォールト伯爵に雇われて彼の肖像がを手がけることになる。ところが「海賊」とあだ名される彼の評判は頗る悪く、クラースもまた大いに振り回されるのだが、その意外な一面を知ったとき、二人は身分や立場を越えて心を通わせていく。
オランダ絵画をモチーフにした物語。(Amazon.紹介頁より)

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猛虎の駆けた道~京師誠忠篇


 元治元年、夏。禁門の変をきっかけに京の都は大火に襲われ、宿屋の野里屋の若旦那である大力は、店と母を失った。途方に暮れていた彼の前に翻るのは「誠」の旗――新撰組の至誠の志に胸打たれた彼は、勘定方として入隊し、日々を過ごすことになる。しかし、彼と新撰組を巻き込んで、歴史は容赦なく激動の時代へと突き進んでいく。

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