セフトバンク・ダディ(2)


「たけまる信金、メガバンクモードへシフト!
 お客様の強行突入に対し、対地対空迎撃戦を展開します!」

金融機関からの現金強奪が合法化した、いつかの未来。
武装し要塞化した銀行及び信用金庫『メガバンク』は、
日夜強盗企業との激しい攻防を繰り広げていた。

窓口係兼第三砲撃手、上武凛子の勤めるたけまる信用金庫に、
大手銀行をいくつも破ってきたという新進気鋭の強盗企業『白糸家』が襲い掛かる。
銀の翼で空を飛び、弾幕を潜って現れたその敵は、人語を解する白い柴犬だった。

これは、この世で最も強き父親たちが贈る、ハートフル・バトル・ホームコメディである。
(サークルサイトより)

※過去の感想はこちら
 セフトバンク・ダディ(1)

「ん?」と思わず手を取ってしまいたくなる表紙。そこに描かれているバックの二人…はともかく、中央の白い柴犬は、あれ? ひょっとしなくても、お父さん(CV:北大路欣也)?
 いえいえ、彼こそは最強のセフトバンク・ダディなのです!

 銀行からの現金強奪が合法化した、という世界観からして素晴らしいぶっ飛びっぷりなのですが、輪をかけて突き抜けているのは個性豊かなキャラクターたち。特に「いや、どう考えてもソフト○ンクやん!」とツッコまずにいられない、武装兵器を背負った白い柴犬・白糸ダンディライ夫、通称“ダディ”の溢れんばかりの男気ときたら…いつしかわんこであることを忘れ、ヒロイン・上武凛子のように頼ってしまいたくなるほどです。
 ただ、そのぶっ飛び具合に反し、内容は極めて骨太で硬派。襲いかかる強大な敵に立ち向かう者の矜持とその熱さ。困難を前にしても強く心を守る家族の絆。そして激闘を通して育まれる、ダディと凛子の信頼。ハリウッドばりのスペクタクルで描かれる数々のシーンは、凄まじいリアリティで脳裏に刻まれていきます。

 そして、クロヒス諸房様の作品を通してなんですが、何よりすごいと思うのはその作品のリアリティを生み出すために精緻に組み立てられた設定と描写です。“銀行からの現金強盗は当たり前”、“犬がしゃべって飛び回りながら格闘する”、“なんか超でかいメガバンクの支店が気づいたらすぐ近くに建ってて、攻撃してくる”、なんて言うのは勿論、普通に考えてありえないですよね。そのありえないことを物語の中でありえるようにするために必要な設定や描写が過不足なく(それがまたすごいと思うんですが)挿入されている。そのような時代になるに至った背景やら成立させている制度やら、戦闘に使われる機械の詳細な設定ですとか…本当にこれをよくぞ揃えられましたなぁと…! おかげでなんのストレスもなく話に
のめり込むことができ、心行くまで最高のエンターテイメントを味わわせて頂きました。

 読み終わった後に思わず、「たけまる信金、メガバンクモードへシフト!」と叫びたくなること請け合いの一作です。…アニメ化してくれないかな…だめか…。


発行:クロヒス諸房
判型:文庫(A6) 180P
頒布価格:500円
サイト:クロヒス諸房
レビュワー:世津路 章