夏がいき、風ばかり熱い


人間の遺伝子と動物の遺伝子を
かけ合わせた生命体
――リリエンス

人権はなく
器物として扱われる
猫のリリエンスを
愛した男がいた
娘の臓器移植のために
リリエンスの生命を
買った夫婦は
娘の葛藤に
気づいていなかった

犠牲の先に
あるものに向かって
男と娘は少しずつ
近づいていた

生きてほしいと願うことは罪なのか。

最後に衝撃を受けた。
主人公と同じ言葉を、鳥肌が立つ心の中で私も繰り返したのを、覚えている。

生きていてほしい。
一緒にいてほしい。
始まりは誰にでもある寂しさであったはずなのに。
人は悲しい存在だ。


発行:下町飲酒会駄文支部
判型:文庫 88P 
頒布価格:500円
サイト:駄文の王様

レビュワー:神風零