Apology Documents/c


 百物語を彷彿とさせる怪談短編集。小雨の降る夜、教室に集まった「僕ら」は、一人ずつ順番に自分の恐怖体験を語り始める。
 収録作は「プロローグ」 ( 著:境桂馬)「背高の木」 (著:境桂馬 原案:境の米問屋)「書き取り練習してはいけない漢字」(著:武田山木下)「枯れ葉の音」(著:境桂馬)「地下鉄の向こう側」(著:武田山木下)「カセットの声」(著:武田山木下) 「雨蛙」(著:境の米問屋)「傘宿り」(著:境桂馬 原案:境の米問屋)「怪談八席」(著:境桂馬)の9作品。

 本作は怪談短編集であるが、昔ながらの妖怪が出てくるような「怪談」ではなく、都市伝説やあるいは現代の「学校の怪談」ともいえる内容である。モノローグで構成されるため、中高生の真剣な語りが聞こえてくるようで、リアルだけれどどこか滑稽だ。10代の思春期でしか持ち得ない、過敏な感受性が見せる「怪奇」というものが、この世にはあるのかもしれない。
 収録作の中でレビュアーのお気に入りは「カセットの声」である。この作品は他の作品とはやや異色の傾向を持っているが、やはり人間の浅ましさこそ妖怪の正体なのだと思える深みのある短編だった。
 怪談好きの方にはぜひおすすめしたい一作だ。


発行:5men
判型:A5 24P  
頒布価格:100円
サイト:5men

レビュワー:唐橋史