言葉


普通の女子高生、美和。普通に家族がいて、友達がいて、学校へ行く。日常の中のほんのささやかな家族への甘えのような八つ当たりをしてしまったその日、その母親が倒れた。


 あんまり書いてもネタバレしてしまうのですが、主軸は主人公と母親の関係性。大抵の人は覚えがあると思うのですが、家族ゆえのわがままや突き放した物言いって結局は甘えですよね。絶対に相手が自分と離れていかないという無意識下の依存。

 普段はまったく気にしない程度の軽いこすれあいやすれ違いですが、それを最後の会話として母親が倒れてしまい、呆然とする美和。親の病気は身に降りかかって初めて愕然とするものですが(普段から病弱なら別ですが、元気な親が明日倒れるとか想像しないよね)、その美和の心理と祈りをストレートに、丁寧に拾っていきます。

 ページ数からお察しですがあまり長い物語ではありません。時間はそんなにかからない。けれど読後にいろんな感慨が残る物語です。
 速水さんの書くものは元から直球なのだけど、テーマ性を短い中に織り込むのは結構な技術がいります。短編でこの重みはいい。
 生死に関わるネタは作話としては若干ズルイw とは思うのですが、しかしかなりグイグイきます。ぶっちゃけると泣いた。

 感情移入できる短編として秀逸と思います。あとは好みか、好みでないか。結末は書きませんが、私はそれでよかったと思います。