はいくな人々


至極普通の高校生『今井 浩介』の所属する2年B組一同は、ある出来事がきっかけで総理大臣の孫娘『豊里 さつき』の怒りを買い、クラス廃止の憂き目に遭遇する(クラス廃止とは、学籍と取得単位を抹消される事で、簡単に言うとクラス一同の強制退学である)
クラス全員から人民裁判にかけられた上、日々責められ事に疲れた今井浩介は、豊里さつきの祖母と交渉し、クラス一同で演劇を行い豊里さつきを満足させればクラス廃止を取り消すと約束する事に成功する。
しかしクラスの中心メンバーとの連絡不備により、廃クラス取り消しの条件面などが上手く伝わっておらず、更にはクラス全員が、廃クラス取り消しの喜びから暴走を始め、演劇もあらぬ方向に進み始める……。

(副墨亭HPより転載)

この副墨亭さんの本は2013年11月現在8冊程所有しています。
サークルとしての凄いところに、ジャンルも王道ファンタジーからバトル物、現代学園モノ、SF、ロボット物までの幅広いジャンルを、
かなり短いスパンながらも、読み応えたっぷりなボリュームで出してくる点が挙げられます。

どれも良作ぞろいですから、どの本を紹介しようか迷いました。良いと思った本全部レビューという時間も覚悟もないので、
その中で一際異彩を放つ本を選ばせて頂きました。

尚、この本には作者のHPからのリンクで、更に詳しいレビューがあるので、気になった方は是非そちらを。

まず、この本のタイトルが謎を呼びます。
殆どの方が「はいく」=俳句だと思うでしょう。私もそうです。
ですが、これは「廃止になるクラス」で「はいく」なのです。
そして「廃止になる」とは、そのクラスの生徒全員の学籍を抹消するということ。
突拍子もないセンスですが、これを面白いと感じた方は読むべきです。
これは、まさにタイトルに負けないぐらい突拍子もないキャラたちが織り成す、終始ガチのコメディなのですから。

そのキャラ達、特に脇役の魅力が素晴らしい。それぞれ少ししか出番がなくても濃くて印象強く残ります。
ところどころ一致した行動をとったりもしますが、大体マイペースな連中の集まり。
はいく決定以降つまり物語開始からずっと絶望しか口にしない担任、元凶なのに主人公に温すぎる生徒会長、
他にも時刻(時間)しか言わないキャラ、フルネームに威厳がありすぎるキャラ、仏教なセリフばかり言うキャラ・・・。
そんな彼らが団結できるのか、果たして劇は成功するのか。そしてクラス廃止は撤回されるのか。
もちろん、まともな劇になるはずがありません。主人公のアクシデント辺りから、どんどんおかしな展開に・・・。
終盤のカオス感は凄まじいものですが、それでもエンディングにはたどり着けます。
わけがわからない状態になりますが、収集が何故かついて大団円。そこはもう作者の技量が凄いからですね。

キャラの台詞も個性豊かですが、この作者の場合、地の文章も工夫を凝らした拘りや広い知識を披露し、味わい深い言い回しを豊富に味わうことができます。
よくこういう言葉が惜しげもなく出てくるなあ、としきりに思うことでしょう。

一体何度自分の顔がにやけたか分からない作品です。

ただ、この方の作品にしては先に述べたように少し異色なので、副墨亭さんの本を読み始めるなら「ザ・ショック・オブ・ザ・フェイティング」若しくは「アイオーンの捜索者たち」が、
バトルシナリオの真髄が見たいなら「グレネーダーガールズ」、王道青春ロボット物なら「あの夏一番静かな空」辺りがオススメですね。


発行:副墨亭
判型:文庫 232P 
頒布価格:
サイト:副墨新報
レビュワー:こくまろ