超絶変身ユカリオン1&2


1巻:
六年前の火事で母親を亡くした少女、由香利。
十二歳の誕生日前夜、宇宙侵略者Dr.チートンが作り出した化け物、異次元モンスターに襲われる。
絶体絶命の由香利を助けたのは、幾度と無く夢で現れた緑色の宝石、リオンクリスタル・アルファの力だった。

2巻:
人間の生体エナジーを奪う「異次元モンスター」と戦う毎日の中、学校ではいじめられっ子の少年「優人」と仲良くなる由香利。
そんな中、かまいたちを操る謎の敵「ロスト・ワン」がユカリオンの前に立ちはばかる。
完結巻。

※公式サイトより

アニメ化希望!

と強く望める良作には、両極の二通りが存在すると思う。
重厚で難解な設定を映像と演技のサポートを受けて楽しみたい時と、自分が描いた映像の答え合わせを楽しみたい時だ。

『超絶変身ユカリオン』は後者にあたる。読者にいかに映像として楽しんでもらうか、著者が苦心し言葉を選び、あるいは情熱のままに書き進めているのが、1シーン1シーンから伺える。うん、そうそう、わかっている。安心して全力で乗っかっていける。
@ーパー戦隊、@面ライダー、そして@リキュア。日アサフリークにとっては王道でお約束のシーンやセンテンスを、ユカリオンはただ切り貼りして並べた物では無い。火を点けるのに必要な順序を、寸分たりとも外さぬように清く正しく踏んでいるだけだ。

1巻序盤、正しく1クールアニメの第1話。家族と悪役の登場から、ユカリオンの初変身。今期録画した新番組リストの中にこの1話があったなら即高画質モードで視聴決定の、いわゆる「良く出来た第1話だったね」。
そして少し踏み込んだ解説と慣れない戦闘トレーニングの2話から、覚醒の片鱗を見せて序盤の強敵を打ち砕き、なお長い戦いの幕開けを予感させて終わる第3話。ここまでが第1巻、止まる事無くページが進む。今期録画視聴継続決定。

一行進むごとに脳内でコンテが切れる。著者の後書きに90年代初頭作品を意識した旨があったが、それが無くてもキャラクターボイスまですんなりと設定できていく。ユカリオンは@下桜だし早田さんは@水奨か置鮎@太郎だし敵のオカマは@ツ矢雄二だし博士キャラのお父さんは茶@林……いやもうちょい若いかな。
文体は何を過剰に主張する事もなく、かといって足りなさや素っ気無さがあるわけでもない。あくまで読者自らがコンテを描けるよう、「観る為の道具」に徹している事が伝わる。

少女由香利も、ユカリオンも、そして現れる敵も強くなっていく。ライバルと黒幕の登場。気になるクラスメイトと、少女らしい恋の気配。近づく別れの予感。あらゆる要素も行間も字間もw詰めるだけ詰め込んで、4話から8話(※アニメ的表現)を駆け抜けてゆく。あ、これ録画じゃだめだ、リアルタイム視聴しなきゃだ。

「君が強く願えば、私はそれに応えよう!」
グラン@ートや龍神@。例を挙げればキリが無い、心の強さが新たなパワーに変わる瞬間に絶対に必要な、滾るセリフ。もちろんしっかり用意されている。ご都合? 違うね。何故ならアルファ(ユカリオンの力の源)のこの言葉こそ、正義の真実そのものだからだ。

12才の変身少女ユカリオンは、最後までその純粋な勇気をそのままに、初恋に巨悪に、全力で立ち向かう。1クールが終わるのが惜しい寂しい、でも最後まで見たい、最高の最終回が見たい9、10話(※アニメ的表現)。

そして、息継ぎ無しに追い続けた視聴者たち(こと俺一人)の強い願いに、ユカリオンはしっかりと応えてくれた。1クールアニメかくあるべきと頷かずにはいられない、納得の最終回だった。
「ベタ過ぎんだろwwww」と煽りレスがいくら付こうと、それすらも誉め言葉だ。信者として自信を持って「でしょwwwwww」と返せる。

ヒーロー・ヒロインアニメや特撮ファン、それも、奇をてらってハズしまくってる感のある最近のアニメ・特撮にちょっとウンザリしている、そんな貴方に全力でオススメ。

「君が強く願えば、私はそれに応えよう!」
アニメ化希望! その願いは間違いなく、読者の脳内で叶うはずだ。


発行:またまたご冗談を!
判型:新書版(1巻/92p 2巻/132p) 
頒布価格:1巻/200円 2巻/300円
サイト:またまたご冗談を!
レビュワー:トオノキョウジ