里帰りの手紙
――へ、あっちでは退屈してないですか。
『便りが無いのは良い報せ』とは言うけれど、送り続けていたら、まさか駅で会うなんて。
それでも、この手紙はまた送っておくね。
ところで、見たとおりだと思うけど、今年も、いつもの浴衣で来たんだ。お祭りだからね。少しくらいは浸りたいし。地味な色かもしれないけど、この方が気楽でいいから。
浴衣が汗ですごく濡れたんだけど、今年もとんでもなく暑いね。
実家も別に雰囲気は悪くないし、まあちょっと、飲み会しててうるさくなることもあるけど。
そういうときは駅前の海辺。あそこ、よく遊んだよね。今も、景色は変わらないけど。
あとは商店街かな。だいぶ、お店も閉まりがちなのは寂しいけど、肉屋さんがカツ丼のお店に変わってた。美味しかった。
ショッピングモールも出来たからなあ。遊び場に変わってくのかな。
商店街での買い食いとかさ、肉屋さんのカレーパンが美味しかったよね。よく一緒に食べたやつ。聞いたら、今も持ち帰り用にあるってメニューくれた。
本屋は来るたびに変わるようになっちゃったなあ。ショッピングモールの本屋は大きいから押されがち。マンガ買ったりして、今もうちで預かってる。
近所の公園は遊具が新しくなってた。夏場向けに小さな水遊び場もできてた。ブランコとボール遊びが出来れば良かったもんね。
夏休みは本当にたくさん遊んで、中学に上がってからも隣町とかまで遊びに行って。本当なら大学もその先も、と思っていたけど、この手紙の返事はそこから途絶えちゃったね。
駅で君が待っていたから、ずっといて欲しくなっちゃったよ……。会えると分かると、たった数秒でも惜しくなるなんてね。
あれは、白昼夢っていうのかな。あそこだけでしか、会えないのかな。
もしこれを読んでいたら、また来年、あそこで会おうね。
駅で会えただけで贅沢なのに、また会いたいと思うのはワガママかな。
とにかく、来年もまた来ます。
たとえあそこにいた君が幻だったとしても、勝手に期待して来ます。君は思い出の人だし、あの駅のホームが今日、私の思い出になった。それだけのことです。
明日、墓参りしてから帰ります。電車が混み合う前に戻らないと。
それじゃ、また来年。
――より
サークル情報
サークル名:えゑいめんどくさい
執筆者名:うらひと
URL(Twitter):@eeimend0kusai
一言アピール
新刊は短歌集『在りし日の』、『喫茶店フォレスタ 2巻』の2作です。日常ものの小説、日常を詠んだ短歌を得意としています。

