〈東京弁天シリーズ〉ブルー・オ・ブルー


「はるか古来より大和の国を護りしは、民どもの祀る神仏なり。されど現
代、民どもの心、神仏より離れ、新しき神の生まれることなし…」
東京弁天シリーズは、そんな世界で、ようやくお生まれになった「平成の
弁才天」、アヤメさまの成長物語です。
室町時代や江戸時代生まれの先輩方に厳しく指導され、時には笑い、時に
は泣きながら、それでも前を向いて進んでいく、これは我々自身の物語で
もあります。
ヒロイン☆ふぇすた!サイトより)

 いつかは誰しも経験する「死」と向き合うこと。それがこの「ブルー・オ・ブルー」には描かれている。

 偶然「記憶の欠片」として出会った京都の姉さま「ツユクサ姉さま」との交流と別れ。
 ボーイッシュなツユクサ姉さまがフリフリの服に憧れてたり、弁天らしくない自分に悩んでいたり。
 それはまさに、思春期の少女の悩みそのもの。模範とする弁天=大人にならねばならないのに、蕾のままでいたいというささやかで幼い願い。
 アヤメさまだけではなく、中堅に位置するアヤメさまの上司、フジ姉さまも、己の焦りにまかせ、年少のものを責めてしまうという過ちも犯します。現実で言えば中間管理職の状態なのでしょう、アヤメさまと同じように、フジ姉さまもまだまだ成長途中なのだなあと思います。

 繊細で愛らしい、少女の心情がよく表れていると同時に、この世界の厳しさや、理不尽さも忘れていない。
 ただ気持ちが良いだけの幻想譚ではなく、その厳しさや理不尽さ(=大人の世界)があるからこそ、アヤメさまが愛おしく見えるに違いないと、私は思います。


発行:宝来文庫
判型:文庫(A6) 84P
頒布価格: 600円
サイト:だぶはちの宝来文庫
レビュワー:服部匠