猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る(4)


「はるか古来より大和の国を護りしは、民どもの祀る神仏なり。されど現
代、民どもの心、神仏より離れ、新しき神の生まれることなし…」
東京弁天シリーズは、そんな世界で、ようやくお生まれになった「平成の
弁才天」、アヤメさまの成長物語です。
室町時代や江戸時代生まれの先輩方に厳しく指導され、時には笑い、時に
は泣きながら、それでも前を向いて進んでいく、これは我々自身の物語で
もあります。
ヒロイン☆ふぇすた!サイトより)

※過去の感想はこちら
 ・猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る(1)
 ・猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る(2)
 ・猫と弁天/アヤメさま、宝船に乗る(3)

「東京弁天シリーズ」の魅力。
それはなんといっても、平成の御世にお生まれになった新人弁天「アヤメさま」の愛らしさでしょう!

「猫と弁天」
 猫カフェに「お勤め」する猫を興味のむくまま追いかけたり、少し憎らしいと思っていたスカイツリー周辺で遊んだり。
 そして、非道な行いをする人間に対して、思わずバチを当ててしまったり。
 弱いものいじめに憤り、しかしその憤りはまだ幼い怒りでしかなく、つい自分を責めてしまうほど心優しいアヤメさま。
 軽妙な語り口が小気味よく、丁寧な解説まで入れてくれるので、神様に詳しくない読み手の私には親切でした。
 何気に浮世に疎いサクラ姉さまの知ったかぶりが可愛くて仕方ないです。アップロードがクリック・クリック……。

「アヤメさま、宝船に乗る」では、一見下品で失礼で横暴な男神さま(まさか毘沙門さまが野球好きなオッサン、大黒さまがアニオタの風貌だとは!)のお相手をしなければならず、泣いたり怒ったりとアヤメさまは散々な目にあってしまいます。振り回されるアヤメさまが可哀想と思う一方、ちょっとからかって遊びたいとい男神様の気持ちも分かってしまうあたり、読み手の私の気持ちも少し穢れているかも知れません(笑)
 男神さま、特に毘沙門さまの描写はリアルなおっさんぽくて、最初こそアヤメさまと同じように「うわあ、こんなのが神様だなんて!」と思ってしまうのですが、宝船のお仕事の本質に気づき、アヤメさまが成長されると同時に、毘沙門さまはおっさんというよりは「おじさま」に見えるようになっていくのが面白かったです。
 そしてラスト、お姉様方の本当の想いに触れ、アヤメさまはぐっと成長されます。軍神としての弁天が、災いを退治する――。普段平和に暮らせているのは、もしかしたらこうした神様のご加護なのだろうかと改めて思った次第です。


発行:宝来文庫
判型:A5 78P
頒布価格:500円
サイト:だぶはちの宝来文庫
レビュワー:服部匠