つぶやきのような言葉、ファンタジーよりの言葉片を集めた掌編集。
詩よりは小説に近い。しかし小説よりは諦念を感じる。短いセンテンスを並べただけ、なのかもしれないがどこか根底に流れている同じ空気を感じる。世界観と簡単に呼んでしまうと陳腐になってしまって悔しいが。
三題噺はいずれもファンタジー、かな? 核兵器が出てきたのは多少驚いたが寓話的で悪くない。掌編も収録されているがいずれも大人の童話と呼ぶべきなのか、小綺麗に繕われた暴力的な物語。飼い犬への偏執的な愛と暴力、西へ向かう男の盲愛に支えられた愚直。冷えて張りつめた冬の空気を感じる。どれも言葉が淡麗で切れる。
前衛的という言葉は軽々しく使うものではないと思うし、この本はそれともまた少し違う。造形そのものは至って普通のオンデマンド本だ。けれどやろうとしていることは実験的で観念的。少ないテキストでどこまでできるかを試したいのだろうか。
読後感が不思議に残る本。
ファンタジー愛好者なら是非。
発行:牧師館の雨傘
判型:A5 28P
頒布価格:300円
サイト:レクトリ・アンブレラ(R.U)
レビュワー:小泉哉女