さんた・るちやによる十三秒間の福音(2)


舞台は近世初期、キリシタン弾圧の嵐吹き荒れる長崎。
長崎奉行所同心の山中孫四郎は、その剣の腕を見込まれて、
キリシタンたちの斬首を執り行うことになる。
そして孫四郎は刑場に引き出されたキリシタンの女、
「るちや」の最期の願いを聞き届けるのだが――。
迫害と救いの残酷を描く表題作をはじめ、
『平家物語』の「重衡被斬」に取材した伝奇短編『或る罪人の死』と、
チャップリンの名作映画『モダン・タイムス』を、
幕末の上野戦争を舞台に翻案し、
維新というモダン・タイムスの黎明に立つ二人の絆を描いた『smile』の計三編を収録。
サークル「史文庫~ふひとふみくら~」初の歴史・伝奇小説短編集。
(著作者様サイトより転載)

三編の独立した短編が入った短編集です。
三編共にさらっと読めるのですが、読後の満足感がすごい。
「或る罪人の死」で平重衡の存在感に魅せられ、「smile」では逃避行を続ける二人の屈託のなさにこちらが元気づけられます。そして表題作「さんた・るちやによる十三秒間の福音」では、なんといってもその十三秒間の福音で世界が変わるその瞬間を目にします。主人公・山中孫四郎を取り巻く民衆の空気の異様さには、読んでいる私までも恐れおののきました。
時代背景を知っていなくても十分楽しめる一冊となっております。歴史小説が苦手、という方にもオススメです。


発行:史文庫~ふひとふみくら~
判型:文庫(A6)67P
頒布価格:300円
サイト:史文庫~ふひとふみくら~
レビュワー:syou