名探偵コナン:2次創作



 オレの名前は工藤新一。幼馴染みの蘭と遊園地に行った際、黒ずくめの組織の取引現場を目撃してしまう。口封じに毒薬を飲まされ、目を覚ますと。
 体が縮んでいた!
 オレが生きていることがバレれば、また命を狙われる。
 そこでとっさに「江戸川コナン」と名乗り、蘭の家に転がり込んだ。
 迷宮知らずの名探偵。真実はいつも一つ!

 世界が0と1だけで構成されていたら、どんなに単純明快だろう。少なくとも0と100よりはマシだ。
 数秒前まで、オレは暇を持て余していた。
 蘭が日米親善空手大会の選手に選ばれたので、応援についてきたのだが……。観客席の準備が予定より遅れ、試合開始まで時間をつぶすことになってしまった。いくら中身が高校生でも、外側が小学生では店に入ると嫌がられる。しかし、外は蒸し暑い。結局、向かいのビルの自販機コーナーで待機するはめになった。ガラス張りの向こうは曇天と体育館。反対側の壁にはひび割れと日焼け。老朽化を象徴するエアコン。
 自販機コーナーに人気はなく。ただただ暇。
 ここまでは0。
 100じけんはつねに突然訪れる。
 ゴシック調のドレスを纏った細身の女。瑠璃色の瞳。純粋欧米人の容姿。推定三十代。
 スーツを纏った長身の男。眼鏡の下、右目に医療用眼帯。国籍不明の容姿。推定十代。
 どちらもおぞけを覚えるほどの美貌。そして、衣服は
黒ずくめ。
 戦慄。
 組織の連中か!?
 室内は自販機と狭い喫煙コーナーしかない。隠れる場所はない。むしろ、隠れた方が不自然だ。奴らが組織の人間でないか、もしくはオレに気づいていないなら、ただ小学生がジュースを飲んでいるだけなのだから。
「あ、見えた!」
 男の方が声を上げ、こちらに走り寄ってくる。心臓が跳ねる。鼓動。
 しかし、男はこちらをまったく見ずに、ガラス張りの外を凝視し始める。
「またかぁ……。呼んだらちゃんと始めるんやで」
「はぁい」
 女の方は慣れた。むしろ慣れてしまった、という口調で命じ。手を空に上げる。
「あ」
 目があった! 再びの激しい鼓動。女は視線をそらす。ハンドバッグからピースを取り出す。ジッポで火を点ける。
 組織の人間じゃないのか?
 だとしたらとんだ取り越し苦労かつ命拾いだ。
 だとしなかったら……ジ・エンド。
 何も起こらないか何もできず死ぬか。
 頭を急速に回転させる。
 結論。
 何かして生きる。
「ねえねえ、お兄さんも空手の選手?」
 熱心に外を見ている男に、子どもの口調で声をかける。
「空手? なんで?」
 きょとんとした返答。
「だって、すごくおっきいもん。それに、体育館の方ずっと見てるし。どこの高校の選手?」
 男は床に座る。いわゆるぺたんこ座り。イコール増える異常。オレと目を合わせる。
「ああ。そういえば……今日、大会だっけ。僕、空手はやってないし。スポーツは全部苦手だよ。なにより、今日は女子の大会だから。やってたって出られないよ」
 おっとりした口調。オレは子どもの口調を崩さない。
「うっそだー。すごい筋肉してるじゃない。あ、わかった! カノジョが選手で出てるんでしょ。それで部活隠すんだー。ごまかされないよ。ねえねえ、どこの高校?」
「カノジョなんていないし、僕は高校生じゃないよ。19歳」
「へえー、ホントかなあ」
「ホ、ホントだよっ。君は大会の応援に来たの? お姉ちゃんが出てるの?」
「うん。応援してあげないと怒るから、しょーがなくだよ」
「うーん、でも、大会に出てるんだから、君のお姉ちゃん、強いよ。僕が試合したら絶対負けちゃうよ」
 ここまではうるさい子ども。男から警戒は感じない。女は喫煙中である以外読めない。
「でもヘンだなあ」
 切り込み開始。
「男子と女子が別の日に試合するのって今年だけなんだよねー。いつも使ってた会場が使えなくなったから。四月にギリギリで決まったことだから、知られてなくて困ってるって姉ちゃん言ってたなー。ねえ、お兄さん」
 男の目が見開かれる。
「スポーツは全部苦手で、カノジョもいなくて、高校生じゃないんだよね? なら、なんで今日は女子だけの試合って知ってるの?」
 一撃。顔面蒼白そうはくの男。さあ、どう出る?
「嘘ついてごめんなさい……。もういじめないでください……」
 解。
 黒ずくめの組織とは無関係。
 が。
 いや、でも、いくらなんでもワンターンキルかよ!? 小学生相手に敬語!? え、いや、弱すぎるだろ!?
 慌てて女の方を見る。ニヤニヤしながら煙草を吸っている。「ナイス少年、もっといじめろ」みたいな顔をしている。無茶ぶりするなよ。オレだってこんな図体のデカいヤツに頭下げられて困ってるんだぞ!
「え、ええっとあの……。ホントは高校生なの?」
「4月までは高校二年生……。大会のことは学校に垂れ幕があったから知ってたの……」
 同級生じゃねえか。学校が違うから正確な日本語では違ったっけ? でも学校が同じなら同級生か。……同級生!? こんなロリ口調で!? オレも似たような口調使ってるけど見た目は子どもなんだぞ!? 女をまた見るも、親指を立てて「続けて続けて」のジェスチャー。クソッ。焦りすぎた!
 さあさあ、がきたのでしかたなく続ける。
「ホントは何しに来たの? 答えて!」
「お仕事……」
「じゃーあのおばさんは仕事の……」
 あぶねッ。口調が工藤新一と江戸川コナンを迷走しかけた!
「あぶないッ! メフィストをおばさんって言っちゃダメ! この世に生きる価値のない人間なんていないけど、そんな雰囲気の死に方をさせられるよ!」
「お兄さん、お口チャック」
 先にお前が死ぬぞ、バーロー。
おさむ
 おののき
 再びの100。
 空気の転換。
 名前を呼ばれた同級生が立ち上がる。女は人差し指を曇天に向ける。獰猛な笑み。
「Go」
 同級生の顔は見えない。身長差。それだけではない。
「君、離れててね」
 彼はガラスを蹴りつける。そして、破片を曇天にまき散らし。割った窓から飛び降りた。

「驚かせてごめんなボク」
 メフィストというらしき女は、関西弁で笑いかける。
「いや、これは想像通り。驚いてへんな。どっから気づいた?」
「想像なんてしてないさ。まず、あのお兄さんは窓の外を見て「見えた!」と言った。この場所にきて初めて見えるものといえば――。地上で写真や動画を撮影している一般人の位置」
「ふむ」
「撮影されないためではなく、撮影されるために、あのお兄さんは飛び降りた。きっともう逃げてるね。だってあのお兄さんはスポーツが苦手と言ったから」
 ふふ。
「スポーツが苦手なのに、やないの?」
「試合では絶対負けるとも言った。けど、あのお兄さんの手には竹刀だこがあった。導かれる結論は一つ。スポーツの試合では絶対に反則負けする……、急所攻撃を使用した実戦格闘術を使う」
「その想像は惜しい。竹刀やなくて木刀だこ。格闘術ではなく」
 牙。
鏖殺おうさつ技術ぎじゅつ
 オレは女を見据える。
「想像はしない」
「なら、何を?」
「推理さ」
 女は煙草を握り消す。熱さを感じた気配はない。
「あらゆる選択肢を想定し、絶対不可能なものから消していく。そして最後に残るのが」
 言い切る。
「真実だ」
 問い。
「動機はこのビルの取り壊しを決定させるため。強化ガラスが割れて人が転落するような事故が撮影までされれば、危険な建築物と誰もが判断せざるをえない。誰も通常の状態での強化ガラスを割る人間を想像しない」
 でも
「でも、なんでこんなことを? あのお兄さんだって絶対ケガしてるはず」
 女は顎に手をやる。
「困っているひとがいるからだよ」
「何の話?」
「ビルの取り壊しに反対運動をしている近隣住民たちがいてね。私たちの思い出の詰まったビルを守れ! まあ、本当はビルなんてどうでもいい。跡地に児童福祉施設ができるから反対なんやな。見知らぬ子どもがいくら泣こうと、自分の所有不動産価格といいところに住んでいる感覚を維持したい。けれど、そう主張してしまうと「まるで悪人みたいな言われ方をするから」ビルを守れという。そういうわけで施設が作れず困っているひとがいる。だから、納は飛び降りた」
 ああ、そういうことか。
「今、じゃあ飛び下りるだろうな、と納得したやろ?」
 ?
 オレの不審が顔に出ていたらしい。女の表情が黒くなる。
「そうやって君は怪物に近づいていく。自身より他者を優先することを、当然とすればするほどに、人間は怪物に近づいていく。ボク、君は君自身が傷ついたときを想像できるか? その想像と真実はどのくらいの価値の差が?」
 新一……!
 返答の前にスマホが鳴る。
 発信者【毛利蘭】
 女が軽く立ち上がる。
「どうやら、まだ安心していてもええようやな。人間の少年」
「ああ、怪物になったらぶっとばされちまうからな。それからオレは」
 アンタの怪物と同級生の
「江戸川コナン。探偵さ」
 女が立ち去る。オレは通話に出る。
「あっ、コナン君! 今、近くで転落事故があったらしいんだけど、大丈夫?」
「うん! なんともないよー。そういえばさ、蘭姉ちゃんは強化ガラスって割れる?」
「え、えー?」
 一拍考えて。
「強化具合によるかなあ?」
 反則負けじゃなくても負けるかもしんねーな。


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サークル名:浮草堂(URL
執筆者名:浮草堂美奈

一言アピール
コナン君、ありがとう。もはや精神が怪物と化してしまっている七竈納君と、普通に最上級悪魔のメフィスト様が活躍する空六六六等ファンタジー小説多数。だいたい生き苦しくて、銃をバカスカ撃ちます。


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