お礼は一頭買い

小説を書きたいと色々考えていたのですが、一番手っ取り早いアンソロ参加方法として、フリーペーパーでやっているぐだぐだな随筆という形に落ち着きました。面白いかどうかを無視して、思っていることを書き散らしています。ご容赦下さい。
手紙というものは、非常に説得力のある形式です。招待状。挨拶状。送り状。色んな手紙がありますが、文例集も数多く、大体は嬉しいものや有用な内容が多いです。
公的機関や会社宛てに送られた手紙は文書類として扱われ、大体は文書収受を管理する事務室等が統括し、供覧という形で職場内で文書箱等が回っています。自分の業務に関連した団体の動静や、新しい情報をここで確認しています。書籍の送付やお礼状もこの中に含まれます。大体は週一回か月一回、手元にやってくるのですが、閑散期も繁忙期もその頻度は変わらず。逆に繁忙期の方が手紙の収受が多い気がしています。
丁度、その文章を繁忙期に読みました。
『お礼の牛揚げます』
牛。ちゃんと中線突き抜けてるから、うまじゃない。日本が誇る家畜の一種で、コストと利益がべらぼうにかかる畜産業界のスター選手。それをお礼に揚げてくれる。だからって、お礼の気持ちであの巨体をどうやって揚げるのか。というか、一頭揚げって調理方法としておかしくないか?血抜きしたところで、牛の骨は揚げるだけでは食べられない。そして内蔵はどうするんだ。ホルモン、きちんと処理すれば美味しいのに。そして、揚げたものをこちらに渡すとは書いていない。綺麗に揚がったのを見せるだけとか、どんな我慢プレイだ。それで馬勝った牛負けたとでも言われたら、私の食い意地は何処に行けばいいのか。
おそらく、これを考えていたのはほんの少しの間です。正味、2分ほど。
団体名とタイトルを確認する限り、内容はお礼状だと分かっているのですが、頭の中は牛一頭素揚げ状態(?)になっていました。繁忙期に誤字を見ると、妄想力のブーストが変な方向に突き進むものです。
お陰で中休みの気持ちで供覧物を見ていて、一気に頭が初期化されました。隣席の同僚に供覧の文書箱を渡し、作業に戻りました。
この繁忙期を乗り切ったら、牛肉を自分へのご褒美に買おう。お財布は多少つらいけれど、この際、ステーキ店のカツサンドを持ち帰りにするのもいいかもしれない。繁忙期というテキには勝っているんだし、牛肉を揚げている。頑張った自分へのお礼だ。
そんなことを思いながら仕事をしていると、少し離れた場所から叫び声が。
「それじゃあ一頭分の牛肉持ってきてー!」
叫んだのは管理職でした。一番忙しい人の本音が、一番当を得ていました。そして叫んだ人の周囲で、誤字と一頭分の肉の話で盛り上がっていました。
たかがお礼状。うっかり誤字。しかし、その手紙の文章ひとつで、受け取る人の気持ちは動いています。あのお礼状は持っていたスキル以上の力を発揮して、職場という殺伐とした環境に和みをもたらしてくれました。
作品は、作家から読者に宛てた手紙です。
読んでくれた人に、見てくれた人に何を感じさせたいのか。しっかり考えなければいけない事なのに、私は衝動で突き進んでいく事が多いです。
絵はもっと描き込みたいという衝動と時間制限のジレンマに苛まれています。誰か時間銀行の所在地を教えて下さい。生命線を代償に貸付ぶん取ってきます。小説ではいつも機関銃の勢いで無駄な情報という弾丸を撃ち続け、敵グループがいるという体裁を保つため、あるはずの無い敵に備えて堅固な要塞作るのに必死になっています。
そんな中途半端な状態ですが、絵を見て下さった方や、読んで下さった方からは肯定的な意見を頂いています。ありがたいことです。
しかし一度、小説の感想にこんな言葉を頂きました。
『何が言いたいのか分からない。』
うん。私も分からない。驚きや共感を呼ぶエピソードも思いつかなければ、ストーリー進行のテンプレートもありません。それこそ、しっかりとした個性を持った神絵師・神作家は溢れるほどいますし、自分の特性を引き出せぬ限り、どう足掻いても美術品にはなれない消耗品だと自覚しています。
恐らく、この方の視点から見た私の作品は、藁半紙程度だったのでしょう。所詮、鉄壁風味に塗装した要塞。火と水、時間経過に弱い。筆圧が強ければ簡単に破れてしまう程度の脆さです。
前回のテキレボEXで、幾つか本を手に入れています。今までのイベントでも手に入れた本が手元に幾冊もあります。彼らの手紙をどう受け取り、どう読み解くのか。私に読了後の感情を伝えきれるだけのスキルがあるのか。
ただ、これは絶対美味しい筈だという食い意地センサーが働いたので、手に入れた本です。
気持ちのいい時間をくれたお礼に、牛を一頭買いして揚げて送りつけてやんよ。
この発言を実行すれば私の財布はすっからかんになるかと思いますが、作家さんへそんな心温まるお礼状を送りたいです。

サークル情報

サークル名:COLOR DROP
執筆者名:ツネぎく
URL(Twitter):@color_drop_t

一言アピール
SFなのか、ハードボイルドなのか、ブラックなのか。勢い品質と気ままなクオリティでゆるゆると書いたり描いたりしています。

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