Text-Revolutionsアンソロジー「はじめてのxx」


第1回Text-Revolutions 参加サークルさん有志によるテーマアンソロジー!
テキレボもみなさまと「初めまして」なので、テーマを「はじめての××」としました。
いろんな”はじめて”がぎゅっと濃縮された1冊です!

sanka

『初めての革命』男一匹元気が出るディスコ/クロフネ三世さん:
革命って何!? をひっさげたまま、僕の世界感に入って行く。
僕の革命とは。僕の望みとは。そして最後。まさかこんな革命が待っているとは。

『争いの終わりに』KK FACTORY/高柳 寛さん:
ゾンビ。といっても、主人公は人。ゾンビ感はあまりないけれど……不思議な読後感。ネタばれてしまいそうで上手く書けないが、この感じは……是非味わって欲しい。

『湯気たつベランダ 見上げた夜空』こんぽた。/世津路 章さん:
お兄ちゃんのたろくんは、お兄ちゃんなのです。ちょっとシリアスな書き出しにどきどきと文字を追ってみれば、優しくステキな結末。タイトル通りの絵が目に浮かんできます。

『初めての恋、あるいは、恋する思考実験』言葉の工房/添嶋 譲さん:
初めての。タイトルの通りの。詩、だろうか。モノクロなのに色を思わせる写真。表されたことばたちは、音を消して、じっくり掴まえたいものばかりだった。

『夜の一頁』千美生の里/野間みつねさん:
タイトルの通りの夜の一頁。街娼が刻むささやかで、確かな一頁。大きな物語を思わせる、そのささやかなエピソードの一つ。『男』の先が知りたくなった。

『初☆パーティー』7’s Library/ななさん:
初めてのパーティ。物語は溜息と共に始まり街道(かな?)を進んでいく。ゆるふわ日常系を見事に体現したSS。この三人どうなるの。笑うしかない。いや、笑いどころじゃない?

『はじめての高尾山』やまいぬワークス/広川 伊砂緒さん:
炎上中のプロジェクトに携わる二人は突然の休暇に思い立ち高尾山へ。気軽なテンポで始まり、冗談を交えながら登り。降りる。ほんの少し、真摯な思いを交えながら。じんわりくる一作。あのときを思い出す。

『初めての海外渡航』高森純一郎/高森純一郎さん:
初めての渡航での今に至る思い出。体験、経験、研究者としての視点。小説と言うよりエッセイか。簡潔で分かり易く。どんな物語を生むのか、率直に興味を持った。

『まほろば町駅前交番』なまけもの亭/アヤキリュウさん:
いつもうるさい警官と補導された女子高生。な、何書いてもネタに触れそうなんですけど!? ラストに思わず叫びましたけど!? でもきっと、女子高生が前を向く。そんな話。

『玉雪開花』MATH-GAME/神楽坂司さん:
小樽。律子の生まれた町。そこにあるのが当たり前の町。一人町を思う律子。呟く言葉。紹介文の通り、どこか棘のある、でもその棘が心地よい読後を生んでいるかのようだった。

『初めてのハイブリッドポエム』おとそ大学パブリッシング/にゃんしーさん:
えぇと、にゃんしーさんで良いのですかな? この落差が。なんと表現すればいいのか。率直に面白い。幾度も眺めて、読んで、余韻を感じたい。ポエム。

『はじめての風邪の日』シアワセモノマニア/青波零也さん:
風邪で寝込んだ八束を見舞う南雲。タイトルでは初めては風邪、だが。この登場人物達のシリーズは、まだ読めておらず、雰囲気知れてお得感。そして最後。すこん、と締まった所が心地よくて、つい、にやけた。

『狂い子ふたり』階亭/ろくさん:
10歳と4歳の子供が鵺に出会う。この短さの中での圧倒的な世界感。恐ろしいような、目が離せないような、そんな感情。これは本編が気になる。

『はめての桃太郎』クロヒス諸房/トオノキョウジさん:
初めて尽くしのクロヒス流桃太郎。最初の10行で爆笑。腹を抱えながらラストまでどうにか読みきりましたがとにかく目には涙。腹にはおそらく筋肉痛。当分、「どんぶらこっこ」で笑い続けそう。

『Do you like Strawberries Pill?』なにがなんでも年内/ひよりさん:
背伸びしたい17歳、無向ミズちゃんのひたすらな思いを描くラブコメ。(多分)丁寧でさり気ない描写からリアルに場面を思い描ける。描けるからこそのギャップが見事。

『先輩の言うことは』春夏冬/姫神雛稀さん:
和菓子店の新商品を紹介する写真を撮る。無理なくリアルな現代の物語。重すぎず軽すぎず、良いテンポの文章はちょっとした出来事をこんなにも輝かせるものなのかと。

『栖のはなし』片足靴屋/Sheagh sidhe/南風野さきはさん:
夜の散歩の最中に出会った少女は、初めての想いに悩んでいた。ファンタジー世界の一欠片を思わせるしっとりとした描写。独特の言い回しも相まって、雰囲気は抜群。

『CANDYxGAME[宵月の森出張版]』SiestaWeb/桂瀬衣緒さん:
頼まれたのは肝試しの最終チェック。軽妙なタッチで、けれどしっかり『正義感少女』悠里の心情を描きつつ、嘘と本音が見え隠れ。この二人のシリーズなら楽しそう。

『セカンドキス』CafeCappucci/ひじりあやさん:
親友のあの子、あの子の恋人。語られた想いはとても共感出来るもの。静かに迎える結末は、しっとりとどこか明るい先を予感させて。嫌いじゃない。

『僕のお仕事』Natural maker/真乃晴花さん:
ピチピチの大天使、ハーリィが任命された仕事とは。ハーリィ、可愛い。お役所というか、案外適当な主天使長官も、謎なんだか分かり易いんだかの副長官も魅力的。土足厳禁に吹きました。

『ラ・ドルチェ・ヴィータは知らない』博物館リュボーフィ/まるた 曜子さん:
リアルであけすけな会話から入る日常の一コマ。彼らのプロフィールは複雑そうだし、気になるのはやはり年齢差。その辺り、納まるまでの紆余曲折は本編にありそう。

『みっちゃん』こんぽた。/堺屋皆人さん:
妖怪になってしまったかのように身体がままならない最近。幼なじみのみっちゃんと再開する。丁寧に描写される場面を描きながら進んだ先の驚きが心地よい。大好きな作品の一つ。

『勿忘草~初めてのお客様~』風花の夢/蒼井 彩夏さん:
密やかに魔女をしているソフィア。知られるはずのない『魔女』を訪ねてきたのは。依頼者たちのささやかな想いが暖かい。彼女の瞳は何を映しているのだろう。

『最近のアレは、はじめるまでがハードモード』漢字中央警備システム/こくまろさん:
新機種ゲームハードの箱をようやく開ける。やりたいゲームがあるのだ。ゲーム好きなら一度や二度は経験があるはず。軽快なテンポで綴られる七転八倒と、驚愕のラスト。こういうの好きだわ-!

『初めてのパワーストーン』トラブルメーカー/セリザワマユミさん:
ちょっとしたことからパワーストーンのブレスレットを手に入れる私。「なんてことない日常」と紹介文にはあり、なんてことない…え、ちょ、え、日常!?

『伸縮小説『初めての時間泥棒』』cage/氷砂糖さん:
僕の手の中の金時計。長さを変えて綴られる金時計と僕の物語。率直に試みが面白い。物語そのものもさることながら、『物語』というものを考えさせられる。

『little Lady~初めてのプレゼント~』七夕空庭園/天川なゆさん:
松ぼっくりから始まった出会い。微笑ましいような、ちょっと痛ましいような。うらやましがって良いのか憐れんで良いのか。読後はちょっとにやっと幸せ感。

『梅田はダンジョン』Mizkid/水城麻衣さん:
大阪に転勤してきた知佳。梅田はダンジョンと脅されて。地元民の説明、描写にダンジョンな様子が見えるよう。そして、そのダンジョンとは。有りそうでなさそうで、でも頷ける。そんなダンジョン。

『初めてのしごと、そして日の出』ナキムシケンシ/谷町悠之助さん:
時告げ鳥の少年の初仕事。神様の力の一端を任された彼の初仕事は緊張の中、恙なく…? 街と日の出の描写に息を呑んだ。すこし軽い先輩との掛け合いが楽しい。

『ファースト・エンカウント・イン・コースティクス』春夏冬/鷹無冴子さん:
高飛び込み用のプールにジャージのまま身体を滑り込ませてみる。水面を見上げた美しさ、冥いものにふとした瞬間取り込まれるその感覚。そして迎える何気ない日常。描写がなんとも鮮やか。

『それは最初で最後の、嘘』二乗天使/ありすうちゃさん:
家出したジュリアン。一度はその手を拒みながら今共にいるリカード。リカードの複雑で真っ直ぐな思いが、雰囲気に反してとても可愛い。

『「さよなら」も最早面倒くさい』人生は緑色/小高まあなさん:
ひとでなしの隆二と幽霊のマオ。捨て猫をつい拾う羽目になってみれば。ほのぼのストーリーから急展開を見せる。残滓はじんと胸に残る。『面倒くさい』の裏側をつい、考える。

『さよなら』HPJ製作工房/森村直也さん:
ページ数喰いました。済みません(-_-;)(本人なので割愛)

『はじめてのダンス』どんつきA町/育美はにさん:
ダンスする少女と指示する男。しっかりと描かれた二人の気持ちは少し切ない。余計なものなどないスッキリとまとまった長さ。この長さでこんなに表せる物なのかと。

『空の青さは』灰青/凪野基さん:
飛竜騎のカタクリ。初めて空へと舞い上がる。風、大地、山、タイトルの通りの空の青さ。丁寧な描写は圧倒的。厳しい世界と漂わせながらも、カタクリと共にその世界に惹きつけられ。溜息。

『外の世界の話』インドの仕立て屋さん/藤和さん:
あるクッキーに恋い焦がれる私。その様子はまさに恋。分かるような突っ込みたくなるような。そこへ訪れる天啓…としか言えないでしょう!? にやっと笑うと同時に心の中で突っ込んでました。

『初めての同人誌』かんだ紅茶倶楽部/小稲荷一照さん:
初めての同人誌にまつわるエッセイ。書く側として非常に興味深く読めた。読む側としてもハッとする物がある。端的に興味が湧いた。そして。読みやすいエッセイだ…。

『猫珈琲喫茶』ばるけん/猫春さん:
疲れ切った主人公は癒やされたいと猫カフェ…ならぬ近所の猫喫茶へ。珈琲の香りが漂ってくる気がする。喫茶店の柔らかい空気を感じ、その意外で不思議な結末にほっと和んだ。

『枯らす女』朝来みゆか/朝来みゆかさん:
なんでもきっちりこなすのに花だけは枯らしてしまう春菜。おっとり昌弘との優しい恋愛エピソード。この先、二人でならと未来を思わせる優しい結末に頬が緩む。

『はじめての友だち』黒の貝殻/緑川かえでさん:
人のいない屋敷の中、主人の目を盗んで同僚に会いに行く。だ、ダークが偽りなくダーク。纏わり付いて絡め取られていくような甘美と諦観と。『友だち』のその響きに…溜息が出る。

『奇蹟を抱く』灯/桜沢麗奈さん:
あの人を待ち続ける。必ず帰ってくる。持って行かれる。文章に。きついわけないのに確かな意志があり。納得せざる得ない力がある。凄いというありふれた感想しか出てこなかった。

『約束してね』藍色のモノローグ/藍間真珠さん:
軌道エレベータでの宇宙旅行を明日に控えたミカ。起きる事件には、目からウロコ。しっかりした世界の中で確かな物語が語られるのはさすが。ちゃんとしたSFだが、さらりと入れる。さすが。

『初めてのラブレター』ふりるふる/橙河さゆさん:
憂鬱な月曜日。下駄箱を開けたら、白い封筒が。かわいいー!!!! これぞティーンズ! 高校生か中学生か。正しく悩んで迎える結末に、また、『かわいいー!』

『当世乙女初乗』蒸奇都市倶楽部/蒸奇都市倶楽部さん:
帝都に上京してきたばかりの楓が初めて電車に乗る。言い回しや単語遣いが雰囲気をさらに彩っていて、知識、楓の体験、描かれる様はまさにスチーム。

『転機-拾遺 闇胡蝶事件帖-』虚影庵/島田詩子さん:
闇胡蝶といきなり至近距離で対峙する穂積。とばっちりから大けがを。いきなりのインパクトに目を見張り、わりと現金な穂積と御前と長田のやりとりに、ついニヤリ。

『初めての永遠』恋人と時限爆弾/鳴原あきらさん:
両親を見送り、軽くなった彰子。妹との会話はごく普通の会話だけれど。どこか引っかかる。タイトルの意味が明らかになる最後。そんな永遠を味わってみたい。

『はじめてのアンソロジー』猫文社/藤木一帆さん:
オリジナルアンソロジー「言葉遊山」に纏わるエッセイ。いや、面白い。興味も沸く。どれだけ鬼畜なんだろうと!

『悩ましい僕の、最初で最後の解放』なにがなんでも年内/りささん:
夢破れた小説家志望の男。自分の小説の主人公のように行動し。重なる構造は明らかになる度どきりとしたり、少しばかり寂しい気持ちになってみたり。最後まで興味深く読めた。

<総括>
読み応えありすぎて、一作一作が面白いアンソロジーでした。
こんなにバリエーションにとんだアンソロジーは初めてかも。
…え、私参加枠だったけど、500円? マジで? 読み終わった後でもいいのと思う質と量。
当日の資金と読む時間と本棚のスペースが今から本気で心配です。

それとですね。本屋さんの文芸棚にあってもおかしくない表紙、厚みがまたたまりません…!


発行:Text-Revolutions
判型:A5 228P
頒布価格:500円
サイト:Text-Revolutions
レビュワー:森村直也

Text-Revolutionsアンソロジー「はじめてのxx」” に対して1件のコメントがあります。

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