泣草図譜やまばと編（アンソロ版）

ころころと咲くえのころに励まされ
行く野良猫は濃きかげを引く

干からびた世界の隅で葉鶏頭はげいとう
胸のうちを曝さらけて立ちぬ

群れ鳥の主従争う喧噪を
飲み込んでなお平たいらかに芒すすき

燃え尽きた炎の痕あとをたかだかと
かかげて怖おじぬ吾亦紅われもこう

境目を滲にじませ咲いた紫陽花あじさいの
罪とともに灼やかれたくあり

祭明け踏みしだかれた野の畦あぜに
秋桜こすもすひくくあばれ咲いたり

烏瓜からすうり朽ちゆくほどに空冴えり
胸の錘おもりをすくなくしてゆく

鬼の灯と名付けた先人を想う
ランプの熱をなだめ五年いつとせ

背伸びした葦あしのあいだを這はいまわる
爽藾そうらいかまわずに行け

サークル名：花うさぎ（URL）
執筆者名：うさうらら

一言アピール
花うさぎは磯崎愛とうさうららのコラボチームです。その作品ジャンルは便宜上ファンタジーを選択していますが、ただしくは夢とうつつのはざま、現代と歴史のはざま、海と陸のはざま、言葉と絵のはざま等あらゆるコトモノのはざまに属します。