授賞式という名のお祭り騒ぎ

これは自分が作った同人誌を宣伝する際に、結構意地汚く自慢していることなんですが(何故ならそれくらいしか自慢できることが無いから)過去に私は、小説の「賞」というものを一度だけいただいたことがあります。
それは某新聞社が主催している文芸コンクールというもので、県内在住の作家が審査員となり毎年入選一作、佳作十作が選出されるというものです。受賞作は審査員の先生の講評付きで、受賞後に新聞一面をまるまる使用して大きく掲載されることになる。
私が受賞したときの審査員は島田雅彦先生で、私は佳作二位でした。
そもそも何故私がその賞に応募したかというきっかけは、単なるなりゆきでした。
その賞には、私が通っ ている小説講座の先生が毎年一回、受講生の私たちの小説を書く腕の「腕試し」として挑戦させるという趣旨があり、投稿した小説は受賞しようがしまいがその後の小説講座でみんなで講評しあう、そういう意味合いがあるのものでした。
先生が何故私たちにその賞に投稿させようとするのかは、短編小説(四百字詰め換算で十五枚規約)なので気軽に書きやすいということと、やはり名前の通った作家先生に自分の書いたものを見てもらえるかもしれないチャンスだということが大きいんだと思う。
毎年、百五十編前後の応募があり、一時通過者三十編前後の中から十一編の受賞者が選出される。その一次通過者に私の名前があったよと小説講座の先生が嬉しそうに講座で教えてくださったときは一次に通っただけでも嬉しかったし、受賞できてもできなくても大満足だー!と感慨もひとしおでした。
で、その後に受賞通知が私のもとに届いて本当に佳作という受賞をしたことを知ったわけですが、このとき私以上に大騒ぎだったのが一緒に小説講座に通っている受講生のみなさんでした。
つーか、なんでみんなそんなに嬉しそうなんだよ、ってくらいきゃあきゃあ騒いでた。
結局、授賞式には私以外の受講生二名+先生に参列してもらった。
毎年、社を挙げた一大イベントであるらしく、会場に紅白の横断幕と大きな花瓶に活けられた花束が印象的でした。会場の雰囲気だけでえらく緊張したのを覚えています。

この時に投稿した作品は、いわゆる「毒親」をテーマにした話で、世間的にも「毒親! ヒューヒュー!」みたいな風潮があったためタイムリーだったのが良かったのかもしれない。
書くときになんとなくイメージしていたのはガストン・ルルーの「黄色い部屋の謎」みたいな雰囲気で、密室殺人だと思ってたけど実は密室殺人じゃなかった、そんな雰囲気でいこうと考えながら書いてたのを覚えています。
島田雅彦先生の講評は、当時のメモ書きを参照すると「ド直球。エディプスコンプレックス。娘であることの不幸。他人であるのに「親子じゃないの」という所有関係がある。怖かったです。非常に怖い家族小説」というようなものでした(もっといっぱい色々言ってくれた気がするんですが覚えてなくてごめん。メモを見返すと他にもフロイトのファミリーロマンスを引き合いに出してらしたらしいが、詳しい内容は覚えてません。本当にごめん馬鹿で)
受賞者は先生の講評に答えるという流れがあって、その後、私もマイクを渡されて一言話すことになった。
もうこのとき自分が話したことを覚えてる自分が嫌なんですが、ちょっと緊張気味に以下のようなことを話しました。記憶の中では。たぶん。
「あの…ありがとうございます。えと、本当に、その通りで…あの、ありがとうございます。…えっと、書きながら…オチ、どうしようかなと思って…(ここで場内から軽く笑いが起こった)別にお母さん、死んでなくてもいいと思うんですよね…うん…響子が、お母さんの妄想に取りつかれているって話なんで…うん…」
私のその言葉に呼応するように、詩部門の審査員である城戸朱里先生から、
「うん、じゃあ、次回はお母さんは生きていた! でお願いします」
と、締めてくださって場内で静かな笑いが起こり、私のターンは終了しました。
島田雅彦先生の他の受賞者の作品についての講評メモを見返してみると、このとき島田先生はカテゴリー別に受賞作を選んでいたのかなーと、思います。
サラリーマン小説、恋愛小説、そして私の家族小説…。たまたま私はその家族小説という枠にするっと入り込むことができたというだけのことで、本当にラッキーだったんだなあ。
何故そんなことをいうのかと言うと、それからも何回かその賞に投稿する機会があったけれど、その後の結果は一次通過にすらかすりもしないからです(笑)。所詮は賞なんて水物なんだなー、本当に私はあのときラッキーだっただけなんだなーとしみじみしてしまう訳なんですが、まあそのラッキーを一度だけでも経験できたことは本当にありがたい話だと今更ながらに心底、思います。

最近、テキレボに参加しているほかの方々の作品が、ラジオドラマになったり商業出版されたりするのを見て、ああ、あのときの小説講座のみなさんが私の受賞であんなに盛り上がっていたのはこの感覚なんだなーと言うのが本当に良くわかった。知ってる人の作品が対外的に承認されるというのは、その人を承認している自分も承認されたような気がして嬉しいのだ。(ただの勘違い馬鹿ですみません)
でもこういうお祭り騒ぎは何回あっても楽しいなあと思うので、是非今後もお祭り騒ぎに巡り合えたら嬉しいし、私もいつかまた偶然に二回目の授賞式に巡り合えたらいいなあと思います。

そんな風にお祭り騒ぎに巻き込まれた「血が流れる」という作品を収録した「ワンダフルライフ!」という短編集は二百円で販売しております。
興味を持っていただけましたら是非、テキレボ当日にお手に取っていただけると嬉しいです(笑)


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サークル名:トラブルメーカー(URL
執筆者名:セリザワマユミ

一言アピール
今回もエッセイです。
そして今回もサークル発行物の宣伝を兼ねてます。
毎回、芸がなくてすみません。

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