その先にあるもの

 潮の香り。静かな波の音。鳶の鳴き声。
 全てが珍しいものだった。
 軟らかな砂をゆっくりと踏みしめ、穏やかな風を受ける。
 まだ海の水は冷たいこの時期、人はほとんどおらず散歩している人がちらほら。
 同じように静かな時間を共有し、あと少ししか触れられないものを感じよう。

 こんな遠くまで今まで一人で来られなかった。目印がなかったから。
 ちょっと背伸びして、自分の勘を信じてみる。
 あれ、ここ何処だろう?
 こっちは行き止まりか……。
 誰の力も頼らず、ひたすら前を向いて歩く。同じような家が並んでいる。
 右往左往して、道が分からなくなって、それでも諦めないでいて。
 そしたら、少し違う風景になった。鼻腔をくすぐるこのにおい。間違っていなかった。
 この場所に不釣り合いな長いトンネル。道はここしか無い。
 この先にあるのだろうか。ゆっくり進んでみる。
 薄暗いトンネル。大丈夫、こっちで合っているんだ。そう言い聞かせて進む。
 不意に見せてきた、小さな光。その先は……。

 温もりと鼓動。
 次は一緒にここで過ごそうね。


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サークル名:シュガーアイス(URL
執筆者名:まつのこ

一言アピール
今回が初参加です。よろしくお願い致します。
普段はBLばっかり書いていますが、それ以外も書きます。
美しいものをいっぱい書きたいです。

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