雨の色彩
雨が長く続くなら花を探しにお出でなさい
雨粒に
次第に澄んでゆくでしょう
細かな脈の網もよう
色彩は僅かに残るのみ
終には其も
花弁は手を切るほどに透明です
色彩をすっかり手放すと
花はやおら散りゆきます
地面に割れてさりん、といいます
土に浸み入る霧雨よりもうんと幽かな音なのです
色彩を含んだ雨垂れは?
色彩を含んだ雨垂れは
地面に落ちてぴたん、といいます
滴と滴は重ね合わさり
けれども色彩は交じることなく
つうっと道を渡ってゆきます
石の
川に細く注し入ります
揺らめきながら
まるい海に辿り着きます
銀の引き汐に連れられて
遥かな沖へ滑りゆきます
色彩は小さな光と分かれて
南を向いてそよ吹きます
海はようよう浅くなり
真珠の砂に宝石の波
転がる色彩は珊瑚の窪みに落ち着いて
睡たい目をした熱帯魚を
サークル名:P-Achira(URL)
執筆者名:稲見晶一言アピール
テキレボには小説をお持ちする予定ですが、詩や短歌も書いています。
今回は既発表作品を手直しして投稿いたしました。