2020年10月27日 / 最終更新日時 : 2020年10月26日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 見えぬ糸の先 ミーランヤには兄がいる。ふたつ年上だがこれが本当に手が掛かる。 腰紐は必ず縦結びだし靴もよく脱げる。農具をしまわせれば泥の着いたまま放り込み、洗濯を任せれば灰汁も使わず絞りが甘いまま紐にかける。兄の中の及第点はとても低 […]
2019年7月31日 / 最終更新日時 : 2019年7月31日 straycat 第9回Webアンソロ「imagine」 うりょう 昔むかしこの村には、鳥になれぬ男子おのこごがおった。母御ははごは産後の肥立ちが悪く亡くなっておったが、雲雀ひばりの父御ててごはひとのままの息子をかわいがり、子はすくすくと育っていった。男子には仲のいい女子おんなごがおり […]
2019年2月1日 / 最終更新日時 : 2019年1月31日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 手に蕾む 静鉄清水線日吉町駅から徒歩3分、住宅街だが、鷹匠は個人小売店が多い。この店は10年前親父が改築し、まわりのこぎれいなマンションに埋もれないよう店構えを変えた。そうはいっても祖父の代から続く和菓子屋、和菓子らしさは捨てぬ […]
2018年4月24日 / 最終更新日時 : 2018年4月23日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 幸運な子供たち 大きな墜落事故だったのだ。世界中を釘付けにしたニュースの更新は暇なくシチズンウェブのホットワードを埋め、1週間後に海で見つかった子供は『奇跡の少女』と人々を滂沱させ、彼女を救うためたちまち義捐金が寄せられ、治療のため本 […]
2017年8月22日 / 最終更新日時 : 2017年8月21日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 就職戦線異形有リ かすれた祭囃子が背後に漂う。スピーカー越しの音頭は反響して不明瞭だが漁師の町なので下世話な歌詞なのは確かだ。 参道の脇の、細く暗い道をひたすら登る。『ついてこれたら』の意味が違うと気づきつつ、絶え間ない『ヒトでないモ […]
2017年1月16日 / 最終更新日時 : 2020年8月21日 Review Review 花街ダイニング いっぱい得にしてあげるね! だから根拠がな……まあいいか 紡績工場の女工に出稼ぎに出たはずが、 隣国の《石の子供》研究機関に密輸出されそうになった 8歳から15歳の10人の《石の子供》の少女たち。 偶然、通りすがりの元第 […]
2017年1月8日 / 最終更新日時 : 2017年1月7日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 山鳩 ~まんが日本昔ばなし底本~ ※二次創作 ※原作:まんが日本昔ばなし「山鳩」 雨が降ってきた。 俺は村から伸びる山道を、そしてその道を覆い隠す山の木々を見あげた。これは大丈夫。農作業の手を止め山を眺める俺を、妻さいが覗うのを背中に感じる。それを無 […]
2016年8月26日 / 最終更新日時 : 2016年8月25日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 15歳の夏 家庭裁判所の廊下で、審判開始をそわそわ待つ。隣に座る和音かずねちゃんはずっと扉を睨んでる。黙ってるのが落ち着かなくて「あのさー」と声を出してしまった。焦って話題を探す。 「和音ちゃんは大丈夫だよ、しっかりしてるし頭もい […]
2016年4月29日 / 最終更新日時 : 2020年8月21日 Review Review 淅瀝の森で君を愛す なあは、そんなにあたしのこと好き? なんであのままじゃダメだったの? あたしたち、しあわせだったよね? 兄に嫁いできた美人の義姉とその連れ子、なあ。 栗色の髪と灰の瞳の男の子は、一目で舞生の家族を魅了した。 家族経営のス […]
2016年2月14日 / 最終更新日時 : 2016年2月16日 straycat テキレボWebアンソロ 世界で一番かわいいこ ついに引越を決めた。荷物の収拾がつかなくなったのだ。たまたま隣駅で分譲賃貸タイプが見つかって即決する。家賃はあがるけどそれ以上に広かったのだ。「タイミングよかったですね」と担当の女性がなあに微笑んていた。相変わらずなあ […]