2020年12月24日 / 最終更新日時 : 2020年12月23日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 海に手紙を出すならば わたしがあの人の音楽を弾くようになって、それなりが経った。 うまくなった気はしない。よいものかもわからない。ただ手応えのないまま闇雲にめったやたらに続け続けて。 「月にむかってどこまでも飛ぶ虫みたいだな」 いつも、そ […]
2017年9月10日 / 最終更新日時 : 2017年9月9日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 醤油祭のはじまり また故人からメッセージが届いた。「終活」なんて言葉が流行ったが、今は生前にメッセージを用意するのは普通の習慣だ。そうした最後の言葉はたいてい死亡届の受理からすぐに配信される。だけど今回の送り主は、死後半年も経ってから送 […]
2017年2月14日 / 最終更新日時 : 2017年2月14日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 終点の海 「家をリフォームするから物を処分する。捨てられたくないものがないか見に来い」 横暴な連絡が実家から来たのはほんの一週間前のことだった。 「ねえ、私の物ってこれだけなの?」 和室に並んでいたのは高校時代の制服や教科書。 […]
2016年9月15日 / 最終更新日時 : 2016年9月15日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 餃子パーティ 「もう手を出さないで。ここは私がやる」 ナイフを握りこんだまま、私は目の前の男を見据えた。 「いやです、僕だって、もっとやってみたい」 その男はボウルの縁に指をかけたまま、譲る気配を見せない。 「今求められるものは冷 […]
2016年5月5日 / 最終更新日時 : 2020年8月21日 Review Review ぬばたまの夜の更けるまで 東日本大震災の周縁を巡る、東北出身者たちの日々を描いた連作短編小説4篇。 (サイトやまいぬワークスより転載) 2015年9月4日、「私」は仕事仲間の数井さんと福島県楢葉町を訪れた。明日からは規制解除が行われる。ぶらぶらと […]
2016年3月1日 / 最終更新日時 : 2016年3月1日 straycat テキレボWebアンソロ しあわせな猫の飼い方 運転席の窓がノックされた。彼が笑っている。後ろ手に何か持っているのがバレバレだ。ははぁ。まあ見て見ぬふりをしよう。だって今日はそういう日だ。 「せり子ちゃん!」 「ヨウ、寒いでしょ、乗って」 助手席のロックを外すと、 […]