2020年11月27日 / 最終更新日時 : 2020年11月26日 anthology_ex2 EX2 Webアンソロ「手紙」 主役のお呼び出しをいたします 自由猫の定休日、いつものように昼頃起きると、ナシ子の姿がなかった。「ナシ子~?」 スウェットの裾から手を入れて、なんとなくかゆい傷痕を指の腹で掻きながらユニットバスを覗く。いない。 ワンルームなので、ほかに姿を隠す場所 […]
2018年5月23日 / 最終更新日時 : 2018年5月21日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 夏のあなたもいとおしい 久しぶりに帰省した町で、わたしは太陽の灼熱を駅舎のひさしの下で逃れながら兄を待っていた。 ぷくぷくと浮き出る汗をそのまま滴らせながら携帯の画面をじっと見ていると、クラクションが鳴る。顔を上げる。見慣れた白のミニバンが […]
2018年5月19日 / 最終更新日時 : 2018年5月18日 straycat 第7回Webアンソロ「海」 物語はここからはじまるのである 春とか、秋とか、暑くもなく寒くもない、いわゆるはざまの季節はなぜかなかなか衣服がセールにならない。 タグについている値札、一万五千円、予算を大幅にオーバーしているかわいいチェック柄、揺れるミニスカート、ふくらむパフス […]
2017年8月7日 / 最終更新日時 : 2017年8月15日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 デートプランはきみのもの 鮮やかな赤い大輪の咲いた、淡いブルーグリーンに白いストライプ地がかわいい浴衣を着て、盥の氷水に足を浸す。 「冷たっ」 慌てて足を引いた彼女は、へら、と照れ笑いをスタッフたちに向けた。髪を結うかんざしについた透かし細工 […]
2017年1月6日 / 最終更新日時 : 2017年1月5日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 へたないいわけ 見ていて可哀相になるくらい、嘘がへたな女である。 もじもじしながらドタキャンの言い訳を連ねている彼女を一瞥し、すぐに自分の爪の先に目線を戻す。あ、ささくれできてる、剥くと痛いかな。 ため息をつく。びくりと怯えたよう […]