2019年1月24日 / 最終更新日時 : 2019年1月23日 straycat 第8回Webアンソロ「花」 花を贈らぬ者 人気の無い路地に、その身を何とか滑り込ませる。 頽れそうな自分の身体を支えるために、七生ななおは激しく首を横に振った。 脳裏を過ぎるのは、先程、大通りで見かけた光景。人混みに殆ど紛れてしまっていたあの小柄な影は、間 […]
2017年8月18日 / 最終更新日時 : 2017年8月17日 straycat 第6回Webアンソロ「祭」 まつりのとき 自走車を駐車スペースに入れようとした瞬間、赤い屋根の下から飛び出してくる従妹の順に気付く。危ない! 運転席に座っていた尤理が叫ぶ前に、賢い自走車は順の数歩手前で何事も無く止まった。 「どうしたの?」 命令する前に開い […]
2017年1月19日 / 最終更新日時 : 2017年1月18日 straycat 第5回Webアンソロ「嘘」 貫き通す ぱたぱたという軽い足音に、刺繍の手を止める。 黒色の糸が見分けられないほど濃い藍色の布を膝の上に置くと同時に、重いはずの扉が意外に軽く開いた。 「リュリっ! 来たっ!」 不意の光に目を瞬かせたリュリの耳に、この家の […]
2016年8月30日 / 最終更新日時 : 2016年8月29日 straycat 第4回Webアンソロ「和」 お菓子を巡る物語 たっぷりの水に一晩浸しておいた、粒の揃った黒赤色の小豆を電気コンロにかける。沸騰したところでコップ一杯の水を加え、もう一度煮立ったらザルに上げて渋切り。指で軽く潰れるようになるまで電気コンロの温度加減を調節しながらもう […]
2016年2月20日 / 最終更新日時 : 2016年2月20日 straycat テキレボWebアンソロ 花咲く頃には 小さなバス停の傍らに置いてある、古びたベンチに座っていた小さな影に、コウサの全身が硬直する。 バス停の横にある、この町の人々が細々と世話をしている小さな花壇に、綺麗な秋桜が咲いている。隣の部屋に一人で暮らすコネコビト […]